大阪料理会│第四回の様子

  この日、参加者にまず供されたのは、3つの紙コップだった。白口浜産、黒口浜産、本場折浜産。それぞれの昆布を1リットルに対して20g、8時間水出しした昆布だしを飲み比べるという趣向である。いずれも道南産の真昆布だが、最高級と誉れ高いのは白口。本場折はやや渋みがあり、黒口は昆布らしい力強い風味。参加者は、き(口へんに利)き酒ならぬきき昆布に神経を研ぎ澄ましていた(協力/谷町六丁目『こんぶ土居』)。
  一品目は『貴重』の広里貴子さんが、その中から黒口、本場折を用いた「鰹生節と松前寄せの炊き合わせ」を披露。水で戻した昆布を、新しい水と共に圧力鍋で20分加熱。それぞれをミキサーにかけ、本場折はすり身などと合わせて真蒸(しんじょう)に。黒口は昆布だしや淡口醤油、葛粉と合わせて練り上げ、冷やし固めた。それぞれの昆布の特徴を生かした食べ比べに、参加者は興味津々。会場は熱を帯び始めた。
  次に、テーマ食材となる細魚の先付、筍の箱寿司が登場。調理は季節料理『天田』の真鍋翔太さん、金城努武さんの両名が担当した。細魚は桜葉の香りの利かせ方、卯の花のしっとりした加減が好評。箱寿司では、「唐墨が無いほうが木の芽の風味が際立ったのでは」という意見も聞かれた。
  ここで、次の料理が供される間、マイクを握ったのは、ヒガシマル醤油褐、究所の真岸範浩さん。特別に、「淡口醤油と濃口醤油の精法上の違い」について講義が行われた。淡口醤油には甘酒を加える、濃口醤油に比べてもろみを低い温度で熟成させる、火入れの程度が弱いなどの比較論が展開され、参加者のメモを取る姿が多く見られた。「醤油の風味が欲しいときは濃口、素材の持ち味を立たせるなら淡口。そもそも醤油作りの目的が違うんです」。真岸さんは最後に、明解な両者の使い分け指南をして講義を終えた。
  続いて、鳥貝、蕨を調理したのは、天王子『さがみや』の阿藤正己さん。銘酒を揃える料理屋だけに、どちらも酒肴風の仕上がりだ。鳥貝は味噌漬けにして炙った。「生ではなく、一塩してから漬けた方がいいのでは?」という提案に、阿藤さんは「歯ごたえの面ではそれもいいでしょうが、風味はこちらの方がよかった。漬け時間も8時間、24時間と試してみたが、12時間がベストだった」と。ここでも、活発な意見交換が見られた。   さらに、蕨の昆布〆では、試食した参加者から様々な感想が。阿藤さんは山芋の昆布〆と合わせたが、「鳥貝にかけても旨いのでは」とは上野さん談。辻調理師専門学校の畑先生は「塩焼きの魚のタレにするのも手。鰆の味噌漬けにも合いそう」と話した。
  トリを飾ったのは、北新地の割烹『石和川』店主・浦上 浩さん。碓井豌豆の葛豆腐では、サヤの茹で汁で風味を強めるという手法に注目が集まった。「無農薬で育てたものなら、サヤの茹で汁を冷まして昆布を浸し、だしを取る。これで豆ご飯を炊くと風味が格段に違う」と上野さん。桜鯛の料理では出汁の優しくも深い塩梅が好評であった。

第四回大阪料理会の様子