大阪料理会│第十六回の様子

上野修三さん

  今回の前菜は、『よし乃』の内谷さんが担当してくれた。毎回、立候補者が増えて嬉しい。今月は五月の料理。初夏の訪れを感じる鮮やかな色合いの皿に仕上がっている。料理名に「小原木」とあるが、これは大原の女性たちが頭の上に薪の束をのせて売り歩いたことに由来しているので、束ねた料理でなければならないと思う。こうした「料理のことば」について、今後も大阪料理会でいろいろと勉強をしていきたい。
  木積筍は、大阪は泉南が誇る野菜。王子さんという農家さんと私も長い付き合いをしている。朝堀りの美味しさは産地の特権なので、それを生かそうという工夫が今回のお二人の料理には感じられた。
  特に、『喜一』北野さんの、筍を蒸すという調理法が面白い。茹でると旨みが茹で汁に流れ出てしまうが、蒸すことで旨みが内包されるような気がする。とても上品な甘みを感じた。姫皮の使い方も素晴らしい。蒸して粽寿しにすることで、木積筍の力強い風味がしっかりと生かされ、端部分とは思えない立派な一品に仕上がっている。
  平貝は、『菜の菜』佐野さんの粕漬けの塩梅がよかった。塩麹で漬けた筍とも相性がよく、また木の芽を味噌仕立てではなく、軽く潰して餡かけにしたことで風味が際立っていた。『喜一』さんの干し平貝のスープは贅沢。丁寧な仕事ぶりに感心した。

畑 耕一郎さん

  『菜の菜』佐野さんが言うように、“発酵”というのは時代のキーワードだ。塩麹の大流行に加え、生甘酒や醤油麹も調味料として期待されている。その点で、今回のプレゼンテーションは面白かった。しかし、木積筍のように素材そのものに力がある場合は、その塩梅をしっかりと考えなければ、持ち味を殺しかねない。「筍発酵ちらし寿し」は、堀りたての筍の風味がよく生かされていた。豆腐の味わいも面白かったし、ネーミングも気になる。楽しい料理だった。
  平貝は、『喜一』の北野さんのスープが印象的だった。乾燥させることで旨みが凝縮し、その戻し汁に野菜のスープを組み合わせ、深い旨みを作り出している。椀種にした平貝が、旨みを出し切ってスカスカになっていると思いきや、持ち味をしっかりと抱きとめていて、こちらも美味。こういう料理は、実に勉強会にふさわしい。参加者も興味津々であった。

第十六回大阪料理会の様子