大阪料理会│第十二回の様子

  平成23年最後の料理会には、師走の忙しい時期にも関わらず多くが参集した。
  まずは、吹田の『旬屋 じょう崎』店主・城崎栄一さんが、地元の食材・吹田慈姑と白甘鯛をテーマに2品を供した。今年は不作と言われる吹田慈姑。「懇意にしている平野農園から貴重な2キロを分けてもらった」と城崎さん。芽が取れると商品にならない慈姑だが、摺りおろしたり、極小の粒を饅頭の中に入れるなどして、使い切る姿勢に賞賛の声が上がった。小さな慈姑が六方に剥かれてある手間仕事にも惜しみない拍手が贈られた。甘鯛については、上野会長から「白、赤、黄の3種が知られている。赤は京都でよく使われるぐじ。少し水っぽい魚ゆえに、若狭で浜塩をして運ばれてくる間に、荷の重みで水がポタポタと落ちて、身が締まり、ちょうど良い加減になった。大阪では塩をしないまま届いたので、白をよく使った。黄色は、相模灘辺りでは干物によく使われる。昔から白、赤、黄の順で味がいいとされており、今は白は大変高価だ」と解説があった。城崎さん工夫の白甘鯛の一品には、「甘鯛は火の入れ方ひとつで変わる食材で、柔らかくするのは難しいのに、アン肝と白甘鯛の柔らかさがマッチしているのは、どんなコツが?」と質問があり、「蒸す温度帯を90〜95℃に設定すること。95℃以上だと硬くなり、90℃以下だと柔らかくなりすぎるんです」と城崎さん。この温度による特性を知るまでに10度も試行を繰り返したというエピソードに、参加者は刺激を受けたよう。
  続いて、旬肴『朋』店主・竹村朋広さんによるマナガツオと大阪水菜の3品。
  「西海に鮭なく東海にマナガツオなしと言われ、マナガツオは名古屋辺りまでしか行かないらしいし、逆に鮭はこちらへ来ません」と上野さん。キズシにされたマナガツオを見て、多くの魚が白くなるのに透き通っていることに驚く参加者多数。「小さいのを喋々と昔呼んだが昔から料理屋は使わなかった。今回のように骨煎餅やサラダにすれば喋々も使える」と上野さん。
  最後は日本料理『喜一』店主・北野博一さんが鶉と田辺大根で3品を。「修業時代にはよく鶉の内臓取りをさせられたものだが、大変臭かった記憶がある。今回は愛知とフランスから取り寄せたが、エサが変わったのか臭みがない。フランス産のほうが鮮度良く昔の味に似て深みがある」という北野さんの話を若い参加者ほど興味深く聞いていたよう。「鶉の卵けんちんは、かつては茶会席の八寸にも出されていたが、今は使ったことがないという料理人も多いのでは」と上野さんの言葉通り、外国で扱った経験を持つ料理人も「骨は使ったことがない。日本料理の骨たたきの考え方に触れられて大変勉強になった」と感想をもらした。「小鳥を食べたことのない人にも、骨のプチプチと当たる食感が面白いはず」と、今や珍しくなった食材に会場が湧いた。田辺大根については、「近頃多い青首の大根は味が薄く、大根辛いのも少ない」と嘆く料理人たちから、田辺大根の旨さが再認識された様子。
  最後に、「料理のことば」に対してより理解を深めようと、辻調理師専門学校の畑先生の講義が行われた。事前に会員の料理人は、「按配(按排)」と「塩梅」の違いについての意見を提出しており、その一覧が配られた。「大阪人は昔から、風呂に入っても、旨いものを食べても、ええあんばいやなと言ったもの。抽象的だが言い得て妙な言葉のひとつだ。さまざまな解釈ができるが、英語で言うと、按排はアレンジ(手配、配列、整理)と訳され、塩梅はシーズニング(調味料)となる。なるほど料理には塩梅酢という言葉があるように、塩梅の方がしっくりくるのかなと思われます」と畑先生が解説すると、「カウンターでのお客さんとの会話の種になります」という声も聞かれた。
  最後に上野さんから、来年3月から催事にちなんだ前菜料理を勉強する旨が改めて伝えられ、今年の勉強会は締めくくられた。

第十二回大阪料理会の様子