大阪料理会│第七回の様子

  今回は料理が14品と多いため、開始すぐに料理が出た。まずは『仁志乃』の西野保孝さんが、堺出身の誇りを胸に名産の穴子と毛馬胡瓜を調理。“じゃこごうこ”のアレンジや、毛馬胡瓜の昆布〆、穴子の沢煮椀、印籠煮など次々に繰り出される創意工夫を凝らした料理に会場は早くも熱気を帯びる。中でも穴子肝豆腐は、「肝を大量に使うのは難しいが、クセもなく滑らかで美味しい」と好評。辻調理師専門学校の畑先生も「穴子でこれだけ様々工夫するのは大変だっただろう」と全7品を供した西村さんを労った。また穴子の一夜干しには、「干し穴子は関東で山椒味噌に浸けて干す料理がある。味わいの濃い堺の穴子なら味噌を使わなくても旨いね」と会長の上野修三さん。
  ここで、堺の穴子専門店『松井泉』の松井利行さんから、「堺の焼き方で焼いた堺の穴子」が一口ずつ配られた。「見た目は脂がのっていないようで、対馬や韓国産に負けないほど、焼くと味が深い」と松井さん。とはいえ今では穴子漁師は堺に2人ほどしかおらず、松井さんも「1週間に20sしか買えない」とのこと。「魯山人が堺の穴子は格別だと書いています。この味と伝統を守って行きたいし、料理人さんにも協力をお願いしたい」と締めくくった。
  続いて『伊万邑』の今村規弘さんが、鯵と無花果を調理。天神祭に付きものの鱧の白天を鯵に代えた吸物に続いて、鯵の生節が供されると、「この頃は鰹の生節もあまり使わない。懐かしい」と会場がどよめく。「ムチッとホクッとの食感の組合せが面白かと」合わせた白玉には、「思いつかないなあ」と上野さんも笑顔。羽曳野の無花果は、朴葉焼風に共葉で包んだ姿が「風情ある」と大好評。若い今村さんの意表を衝く表現に、会場は一際沸いた。
  真子鰈と能勢原木の干し椎茸は『慶喜』の石橋慶喜さんが担当。エスプーマスープやパコジェットを使った椎茸のシャーベットなど、洋の新技術を積極的に取り入れた手法や手間暇の掛かった皮帯せんべい、しらさ海老の椎茸見立て揚げ、水茄子で作ったタレなどが絶賛され、料理法への質問も相次いだ。
  ヒガシマル醤油褐、究所の真岸範浩さんによるミニ講座「丸大豆と脱脂加工大豆の違い」もあり。「油分がある分まろやかさが持続する丸大豆と、強い旨みとキレのある風味の脱脂加工大豆は、良い悪いでなく、それぞれの特徴を巧く使い分けてほしい」という話に水で割った醤油を試飲しつつ参加者は深く納得の様子。また大阪木津市場の太田雅士さんは、「大阪湾の穴子は実は日本一」「大阪湾は鰈のゆりかごだった」「金色に光る鯵がいた」など、興味深い話を披露。
  最後に、上野さんから、「割烹と料亭の違い」について短いお話が。「割烹は客の顔を見ながら料理できるので、何が求められているかがよく分かる。料亭はそもそも食べるだけが目的の割烹とは異なり、玄関に入るところから帰るまでの行程すべてが料理、つまり総合芸術だ」。そして「はかりてと食べ手の想いが一致したら、一番の料理が出来たというのだろうが、100%はなかなか難しい」と、自らの経験談を面白可笑しく挟んだ、軽妙な語り口に会場はひととき和んだ。

第七回大阪料理会の様子