大阪料理会│第六回の様子

  6回目の実施に「段取りや、各料理人の仕込みがスムーズに。何よりメニューの組み立てが良くなった」と会長の上野修三さん。
  まず腕を振るったのは、小南瓜と目板鰈を担当した『枡田』の枡田兆史さん。「普段はエビス南瓜や、赤南瓜など甘みが強い物を使います。黒川南瓜はやさしい甘さが特徴」。すり流しには皮も一緒にミキサーにかけ、種も乾燥させてから油で煎って食感を演出。「皮を使っているが色味がきれい。“始末の心”がよく分かる。また濃厚なすり流しはソースにも使える」と辻調理師専門学校の畑先生も高評価。初夏をイメージしたあしらいに蓴菜(じゅうさい)を用いたのだが「昔は大阪でも獲れた。万葉集の歌にもでてくる」と上野さん。その歴史感に参加者は感慨深い表情。また目板鰈の肝を使った「玉蜀黍の目板肝和え」は、料理人一同めったに使わない食材とあって興味深く試食。「30人前で40枚の鰈を使用。決して歩留まりが良いもんではありません」と枡田さん。一同の笑いを誘っていた。
  続いて和泉蛸と千両茄子を担当した『喜一』の北野博一さん。お店でも使用する大和川上流が産地の千両茄子を持参。「サイズが大きく、皮が柔らかい」と参加者から賞賛の声。「地元では皮を剥かないで調理するのが主流。雨に弱いので年中ハウス栽培されています」と自慢の素材は、持ち味をシンプルに引き出すため亀甲焼に仕上げた。また泉州蛸は「明石に比べると歯切れがよい」と、食材の特徴を活かした、柔らか煮、白とろろ昆布添え、洗いと蛸三昧で一皿をまとめた。
  鯒(コチ)と薇を担当した『太庵』の高畑さん。鯒の胃袋と腸を一年間塩漬けにし、調味料として使用した「鯒と真子和え」は会場の参加者を驚かせた。「魚介の内臓は大体塩漬けして使います。独特の臭さが半年くらいからまろやかな味わいに変わる。焼物のタレなど、アクセントとしても」と高畑さん。「捨てる内臓を活用。しかも1年かけて計画的に自分の出したい味を考えている。素晴らしい」と上野さんが絶賛。“始末の極み”を実感した料理は、参加者の多くから賞賛を受けた。
  定番となった大阪木津市場の太田雅士さんの解説。参加者から明石と泉州の蛸の違いについて質問があり、塩分濃度と海流の違いを説明。「大阪湾は“甘い水”と言われ塩分が薄く、海流も穏やか。蛸にも同じ事が言え、塩分が低く、身が柔らかいのが特徴と言えます」と。「7月に入ると半夏(はげしょ)と言われ、田植えの一休みにタウリンが多い蛸は、握り飯などにしてよく食べられる」など文化的側面からも食材を紹介した。
  その他、ヒガシマル醤油褐、究所の真岸範浩さんから「醤油製造における火入れの役割」についての講義。火入れには6つの役割「香り・味・色・酵素の失活・殺菌・おりの形成」があり、商品の品質を大きく左右する重要な工程であることを説明。淡口醤油については、華やかさを損なわないように火入れの程度を弱くしているなど、濃口との違いの解説もあった。10倍希釈した火入したものしてないものをテイスティングする機会も。火入れされた方の醤油は味にまとまりがあり、調和のとれたすっきりとした味わいを感じることができた。また「風味を向上させるために、火入れする調味料は珍しい。火入れすることで余分なものが取り除かれ、醤油の最終的な品質が決まります」と真岸さん。一同、火入れの大切を実感する機会を得た。
  「料理だけの質疑応答だけでなく、料理に取り組む思想について、もっとコミュニケーションを図りたい」と上野さん。活気に満ちた会を締めくくった。

第六回大阪料理会の様子