大阪料理会│第十八回の様子

上野修三さん

  鰯は、昔から大阪で好んで食されてきた魚の代表格。大衆魚なので料理屋で供するのには創意工夫がいるので、あえて今回の食材に選んだ。大阪あべの辻調理師専門学校の清水さんの塩麹風味揚げには驚きましたな。麹の香りと味わいが、脂ののった鰯によくマッチしていた。何より、毛馬胡瓜を揚げ物の芯にして、間接的に加熱する仕事に驚いた。何度となく毛馬胡瓜を扱ってきたが、加熱するという発想はなかった。独特の食感が生まれ、これは良かった。
  鮑は、料理屋の夏の主素材の一つ。清水さんのあわび飯は、塩梅がよろしいな。『割烹 味菜』の坂本さんのクリーム餡掛けは、これまた発想が面白い。生クリームを使いながらも、しつこさがなくて上品。
  蓴菜は、ちょっと意地悪なお題やったかも。これを主役に一品を作るというのは、難しい。清涼感ある素材なので、ゼリー寄せは定番。キレイな仕上がりでした。清水さんのデザートというアイデアには会場が沸きましたな。奇天烈な発想ですが、蓴菜が豌豆餡とよく合って、これはなかなかイケますね。

畑 耕一郎さん

  前菜を担当した『西心斎橋ゆうの』柚野さんのは、勢いのある若手だけあって、さすが頭が柔らかい。70℃で3分弱炊いて、急冷するという夏牡蠣の火入れは、会員の興味を引いてましたな。日本料理でも、こうした低温調理を取り入れる料理人は増えてきた。半生の美味しさを引き出した今回のような火入れは、参考になると思う。
  また、鰯の料理も、流行の塩麹を用いて、真空調理で味を入れていくという工程があり、注目を集めていた。蓴菜のデザートでも、シロップ漬けの工程で真空調理を用いていました。フランス料理の世界では、約30年前からすでに用いられていた手法です。最近の日本料理人は、他ジャンルのシェフたちと積極的に交流しているので、こうした技術や、『割烹 味菜』の坂本さんが鰯の酢味噌にバルサミコ酢を用いたように、食材の情報も交換できる。非常にいいことだと思います。

第十八回大阪料理会の様子