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大阪料理会とは 組織メンバー 今月の大阪料理 活動レポート
今月の献立 〈第27回〉
2013年 3月

第27回の大阪料理会。大阪府下は大きく5つのエリア(市内・北摂・北中河内・南河内・泉州)に大別されるが、今月は前回の北・中河内地域の「料亭 梅廼家」に次いで、泉州の「料亭 深川」から地域の旬の食材を使った料理、地域ならではの歳事と食をベースとした大阪料理が披露された。
また北新地の割烹からは市内における春の「櫻」をテーマとした大阪料理の味わいが提案された。


坂本 晋さん 坂本 晋さん
割烹 味菜
お店HP
吉良 健太郎 吉良 健太郎さん
料亭 深川
坂本 晋さんの献立 吉良 健太郎さんの献立 撮影/藤澤 了 文/笹井良隆

◆4月の前菜テーマ/泉州郷乃春

【料理名】泉州郷乃春

・(春山)春の遠山真蒸
・(花盛)泉州飛荒海老朧寿司桜見立
・(苺摘み)苺と松浪甘藍 苺白酢和え
・(春霞)浅利と泉州水蕗 浅利出汁のジュレ
・(貝寄風)地鳥貝と木積筍 尾崎漁港の生海苔掛け


大阪府貝塚市の老舗料亭として知られる『深川』。食材そして調理法にも泉州地区らしさを色濃く表現した春の前菜料理が発表された。先ずは、酒煎りした地鶏のミンチと碓井豌豆を使い、春の遠山をイメージさせた「春の遠山真蒸」。次に、泉州好みの飛荒海老で花盛りを表現した「泉州飛荒海老朧寿司桜花見立」、この料理の背景には泉州地区の郷土料理として親しまれている「そぼろ箱寿司」を見ることができる。続いて里山の春の楽しみとなっている苺摘みを料理に取り入れた、苺と松浪甘藍(キャベツ)の「苺白酢和え」。フリーズドライの苺を活用した新しい試みだ。最後に泉州の季節の貝を使った二品。ひとつは浅利と泉州水蕗による「浅利出汁のジュレ」、浅利と笹打ち蕗の取り合わせが面白い。もうひとつが地の鳥貝と木積筍を合わせた「赤貝と木積筍 尾崎産生海苔掛け」、筍の地で鳥貝を煮た貝寄風となっている。


◆3月のテーマ食材/蔬菜篇「松浪甘藍(キャベツ)」

【料理名】松浪甘藍餅饅頭

甘味が強く柔らかい大阪好みのキャベツとして知られる松浪キャベツを使った餅饅頭。
吉良料理長が、食べ手に「キャベツを食べているんだ」という印象を与えたかったというように、まさにそのような仕上がりとなっている。あえて魚介を使用せず、原木椎茸や木積筍といった野菜そしてキャベツの芯などを饅頭の具に仕立てることで、松浪キャベツの持つ甘味と火入れした時の鮮やかな緑の色合いが生かされている。


◆3月のテーマ食材/魚介篇「神頭烏賊(ひいか)」

【料理名】ヒイカの粕漬け ギンタ黒七味干し / ヒイカ飯烏賊焼包み 銀餡掛け

泉州のヒイカを使った二品。「ヒイカの粕漬け ギンタ黒七味干し」は、地元の酒蔵の大吟醸酒粕で作った床を利用。ボイルしたヒイカに粕を詰め2日程度漬け込んでいる。ヒイラギ科の小魚として泉州で愛されているギンタは頭をとり二枚に卸し黒七味で処理後に軽く炙っている。
「ヒイカ飯烏賊焼包み 銀餡掛け」は霜振りしたヒイカに下味をつけ、米と餅米を合わせたものを入れ昆布出汁で炊き、銀餡掛けとしている。泉州には地元に愛される魚介が多い。しかし鳥貝や赤貝等といった特定の食材が、市内市場では異常な高値で取引され地元の料理屋では扱えない状況となっていることも合わせて報告された。




【総評】

いずれも泉州の春を感じさせる料理との好評価であったが、特に前菜では食べ方(供し方)にもうひと工夫欲しいとの意見も聞かれた。泉州飛荒海老を使った寿司も着想は素晴らしいが、そのままでは少し食べにくいので葉で包むなどしてはどうかとの提案もあった。また苺白酢和えについても発想のユニークさはあるが、味が強いフリーズドライの苺粉末の使い方に、もうひと工夫との声が多くあった。
「松浪甘藍」をテーマにした料理では、日本料理ではあまり使われないキャベツだが、春キャベツの新しい可能性を知ることができたと高評価であった。また「ヒイカ」や付け合わせに使われていた「ギンタ」を使ったテーマ料理では、泉州の食材の美味しさやシンプルながらも奥深い料理法に驚きの声が聞かれた。
また、いずれの料理にも季節感はもちろん、細かな仕事がじつに丁寧になされていること。食材を大切にした料理であることなどの声が参加者から多く聞かれた。

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【畑会長からのメッセージ】

大阪料理会全体で日本料理をめざす若き人材を育成しよう

昨今、日本料理店の抱える悩みのひとつに人材の問題がある。人がいない、確保できないといったことが急務ともなっている。今、日本料理を志す若者は何を考えているのか、働くことにどのような考え方を持っているのか。これらを大阪料理会でも勉強していきたい。先ずは手始めとして、大阪あべの辻調理師専門学校の進路指導担当者を大阪料理会へ迎えて、学生達の声などを店主に聞いてもらえる場を設けていきたい。また進路指導担当者にも店側の声を知ってもらいたい。こうした動きの中から、将来の大阪の日本料理を背負ってもらう人材を皆で育成していきたいと思う。