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大阪料理会とは 組織メンバー 今月の大阪料理 活動レポート
今月の献立 〈第30回〉
2013年 6月

第30回の大阪料理会。大阪の7月といえば市内は祭月。前菜のテーマにも「天神祭」が選ばれている。ひと口に大阪の夏といっても地域により趣が大きく異なる。かつて府下が摂津と河内と和泉に分けられてきたように、それぞれの地域色は今も残されている。今回は河内長野など「奥河内」にスポットをあてた夏らしい前菜料理が提案された。また上野相談役からは今期新企画第三回目にあたる「私考 大阪料理」の小講演が。そして今回からは「大阪出汁」にスポットをあてた新企画もスタート。第一回目は、ヒガシマル醤油研究所の協力を得て「鰹節と醤油」についての試飲勉強会が行われた。


北野 博一 北野 博一さん
日本料理 喜一
お店HP
大屋 友和さん 大屋 友和さん
割烹 翠

北野 博一さんの献立 大屋 友和さんの献立 撮影/藤澤 了 文/笹井良隆

◆7月の前菜テーマ/天神祭

【料理名】天神祭

・(陸渡御)鱧寿司(鉾流神事)神鉾はじかみ
・(船渡御)小メロンに鱧子酒盗 鱒子
・八尾枝豆のつくね
・丸十塩蜜煮
・蛸と毛馬胡瓜のざくざく


大阪の市内夏祭の食といえば何と言っても鱧そして蛸が主役となる。大屋氏の前菜料理はこうした食材を使いながら、天神祭らしい前菜に仕上げられている。まずは天神祭で行われる陸渡御を鱧寿司で表現。はじかみは鉾流神事の鉾に見立てている。渡御の先陣となる催(もよおし)太鼓をかたどった丸十(薩摩芋)の塩蜜煮。祭りのクライマックスを締めくくる船渡御に小メロンを用いているのもアイデアだろう。これらに加え、大阪の傑作惣菜とされる鱧皮のざくざくを料理屋風にアレンジしたのが蛸と毛馬胡瓜のざくざく。鱧皮とは異なった食感が何とも面白い。天神祭という難しいテーマを、さらりと仕立てた、大阪らしい粋(すい)な前菜といえよう。


◆6月のテーマ食材/蔬菜篇「泉州貝塚早生玉葱」

【料理名】泉州玉葱羹

「早生玉葱なのでかなり終盤となりましたが、どうしても泉州早生玉葱ならではの甘さや旨さにこだわりたかった」と大屋氏が話すように、泉州玉葱の良さを凝縮させた料理となっている。薄くスライスした玉葱を炒め、出汁でさらに煮たものをミキサーにかけ淡口等で調味しゼラチンで冷やし固めている。合わせて湯通しした玉葱を八方酢に漬け霰切りに。才巻海老は艶煮に。これらを合わせ黄身餡で食する。才巻海老の味わいが泉州玉葱の味わいをさらに高めている、何とも夏らしい羹といえよう。


◆6月のテーマ食材/魚介篇「真鮹」

【料理名】真鮹と夏野菜 冷やし炊き合わせ

大阪には「芋蛸南京」という昔から親しまれた惣菜があるが、今回の料理はまさにその料理屋版といえよう。慣れ親しんだ家庭料理をいかに料理風に仕立てるか。食材ひとつひとつの扱いにも料理屋の技を見ることができる。この料理の最大のポイントは何といっても蛸の処理。冷凍した生蛸を65℃で3分間煮るという独自の低温調理理論に基づいたユニークな蛸処理。生蛸の感覚を残しながらも、蛸の歯ごたえや味わいをしっかりと感じさせる。夏野菜との取り合わせも申し分ない出来映えとなっている。




【総評】

前菜料理といえばどうしても作り込んでしまいがちになる。今回の前菜料理は天神祭という大きなテーマに挑みながらも、作り込み過ぎずにさらりとした洒脱感を感じさせるところが好評であった。調理手法としては鱧子の酒盗が面白いという声、また蛸のざくざく料理では、胡瓜・生姜そして麹を土佐酢で和えているところに意見が多く、麹の甘味の出し方に議論が広がった。さてテーマ食材ではやはり「蛸」の調理法について意見が集中した。
スーパーで売られている冷凍蛸からヒントを得たというこの手法だが、微妙な温度帯での
調理法によって蛸の食感や味わいが変化することに驚きの声が少なくなかった。活蛸では得られない新しい蛸の活かし方として、今後さらに研究してみたいという会員の声もあった。泉州玉葱の料理については、玉葱の旨さはよく出ていたという評がある一方で、太白油で炒める必要があったのかどうか、また炒めるとすればその時間の加減をもっと研究する必要があるのではという意見も聞かれた。

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