【料理について】
節分時期のよく脂がのった瀬戸内産の鰆。そして甘みを増した大阪の松波キャベツを糀漬けにした一品。さく取りした鰆に強塩、塩を洗い落としてそぎ切りにし酢で〆ること一日。キャベツに加えて生姜・人参・柚子などが使われている。炊いた御飯と糀を合わせて漬樽へ。いわゆる、かぶら寿司の大阪版といえそうな飯寿司仕立てとなっている。
節分といえば鰯だが、ここではへしこ風となっている。大羽の塩鰯を使い糠床に漬け込んでいる。もどした切干し大根を炊きあげ調味したもので巻いている。節分ならではのもう一品は、蛸と合わせた大豆。皮色ともに美しく柔らかな身肉の蛸は大豆との相性も良い。新牛蒡を鬼の金棒に見立てた一品も面白い。170℃で素揚げした後に調味し胡麻をまぶしている。蕗の薹の甘辛煮は、昔ながらに灰汁でアクを除き味付けされているが、山菜らしい苦味の残り具合が絶妙といえよう。
【総評】
鰆と松波キャベツの飯寿司。発想も味わいもユニークで面白い、との意見が多く聞かれた。ただ、飯寿司として供するのであれば、少し発酵が足りなかったのが残念とする感想があった。またそぎ切りされた鰆だが、皮のかたさを感じたので、事前に皮に包丁目を入れておけばさらによかったのでは、といった意見なども寄せられていた。鰯をつかった料理では、とても塩鰯とは思えない旨さとの評価があった。
またここでは糠床の作り方などについて運営委員からも様々な手法が紹介された。大豆と蛸を合わせた一品では、蛸を大根で叩くといった昔ながらのやり方に対する各々の見解が披露された。実際に柔らかく調理された蛸を前にし、単に根拠の有無を話し合うのではなく、求める結果を導き出すためにどうすべきかが論点となった。同様に蕗の薹の甘辛煮においても、藁焼きした後の灰汁を用いるという昔の手法が使われたが、そこからくる程よい苦味を前にし、昔の仕事の意味や意義を多くの会員が感じていたのではないだろうか。
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