![前菜](./img/1_zensai_s.jpg)
【総評】
「突出しとは、いわばお客との最初のコミュニケーション。通常は二鉢程度だが、この突出しにより一見のお客も緊張がほぐれ、馴染みのお客になってもらえる。突出しにはそんな意味合いもある。今回の提案はとても面白い」「小皿や小鉢ものというには惜しい。もう少し手を加えればコースの一品にも使えそうなものも多く、とてもヒントになった」。このような評とコメントが多く寄せられた。なかでも、鴨肉の火入れについての質疑応答が多くなされた。運営委員からは、「突出しは、後の料理より豪華であってはいけないし、また質素すぎてもいけない。その場を見計らいながらの料理となるので、難しい一面もある。今回は鯛のせせり身などを有効に活用しながら、お客の顔を見て、その場で瞬時に揚げたてや蒸したてを出すことができる。いかにも割烹的な突出しの好例といえるのではないか」などの意見が聞かれた。
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割烹五種小皿突出し
・汲み上げ豆腐 生雲丹
・河内鴨 酢どり白菜
・鯛昆布〆 かくや和え
・鯛の寄せ身揚げ
・柚餅子(ゆべし)飯蒸し
突出しを分かりやすくいえば、割烹版前菜ということになるだろう。そもそも前菜という言葉が日本料理において使用されだしたのが昭和の初期からといわれているので、それまで大阪では突出しこそが純粋な型であったといえよう。
さて、汲み上げ豆腐を使った突出しは、裏濾した汲み上げ湯葉と豆乳を合わせ、塩と淡口醤油で調味、当たり胡麻と全卵を合わせて流し函で蒸している。卵餡は、卵黄と天だしを湯煎し、泡立てて太白胡麻油で乳化させている。切り分けた汲み上げ豆腐にウニをのせ、バーナーで炙り、焦げ目を付けている。
鴨肉の突出しは、玉ネギ・人参・鷹の爪・粗挽き山椒・砂糖で作った野菜だしに鴨のモモ肉を漬け込み、筒状に成形したものを110℃で5時間火入れしている。
鯛の昆布締めは、天に沢庵(たくあん)を桂むきして細切りしたもの、昆布締めした小蕪を盛り、土佐酢が張られている。
鯛の寄せ身揚げは、鯛のせせり身と刻み木耳(キクラゲ)の寄せ身揚げ。いかにも割烹らしい、始末の心が伝わる逸品。
柚餅子の飯蒸しは、自家製の柚餅子の薄切りを餅米で挟み、銀餡が掛けられている。食欲をそそる、後の料理に期待を抱かせる突出しといえよう。
![大阪料理会](./img/1_zensai_sub2.jpg)
![大阪料理会](./img/1_zensai_sub1.jpg)
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