大阪料理会│第十五回の様子

上野修三さん

  料理屋で小さな鯛を使うとこは少ないかもしれない。昔は、「れんこ」と呼ばれる黄鯛や、通称シズの「チダイ」あたりをよく使った。金沢では、「鯛の唐蒸し」という郷土料理があって、二尾の小鯛の腹に卯の花を詰める料理がある。大阪では、お祝いの席に、赤飯を腹に詰めて蒸す「鯛赤飯」をよく出していた。『天田』の金城さんは、その料理を古代米でアレンジしてくれた。こういう料理が次代に伝わるのは嬉しいこと。また、『雲鶴』の島村さんの野崎焼きには、一本とられた。頭から骨も食べられるという油煮の調理法は、とても現代的で、始末もよい。何より美味しかった。
  山独活の料理としては、『雲鶴』島村さんのキンピラがよかった。イカナゴが主役の料理だが、色白に仕上げてるのがいい。そこへ独活の風味と食感が生きていて、名脇役という感じだ。
  『天田』金城さんのオコゼの洋風煮は、バターを使っているが、きちんと和食の印象。黒胡椒なんかを振っても良かったかな。

畑 耕一郎さん

  4月の前菜として、今回は『旬鮮和楽 さな井』長内さんが、春まっ盛りの料理を作ってくれた。花見をイメージした仕上がりで、見た目も美しいが、特筆すべきは「割烹でできるだけ早く提供できるもの」という視点。カウンター割烹で時節の料理をまず供し、そこから会話が生まれたり、その後に続く料理への期待感を高めたりということで、前菜をもっと活用してもらえたら、と思う。
  今回は、食べ合わせの妙が印象に残った。『天田』の金城さんの山独活の胡桃酢和えは、リンゴを使っていて面白かった。酸味あるリンゴを使えばフレッシュな味わいになるし、糖度の高いものを焼いて用いればもっと香り高い仕上がりになる。そういう意味で、いろいろと話の広がる料理で、勉強会向きだ。
  『雲鶴』の島村さんの桜餅も興味深い。桜の葉の品のよい香りと合うのかな、と思って食したが、これが意外によく合う。山独活の食感も生きている。キンピラは、イカナゴの生かし方が良かった。この食材はほとんどが釘煮にされてしまうが、あんなに濃い味で炊いてしまうのはもったいないのでは。今は流通も冷蔵などの保存技術も発展しているのだから、旬の味わいをもっと大切にしたい。来年はこの食材をテーマにしてみたいと思った。

第十五回大阪料理会の様子