大阪料理会│第十回の様子

  節目の十回目を迎えた今回。参加者も多く、会場はほぼ満席。まずは北新地の人気店『弧柳』の松尾慎太郎さんによる料理。上野会長はこの料理について、「香りを楽しむ料理として良い。近頃はさまざまな国の料理が入ってきて、家庭でも洋風を食べるから、味覚が混雑してきている。あっさり淡泊な料理が少なくなった。味覚にポイントが置かれているのはよい。」。二品目は鼠鯒。油を使わない二品に、泉州を地元とする参加者から感服したとの声が上がった。
  2人目は『和洋遊膳 中村』の中村正明さん。干し芋茎と秋鯖で三品を披露。洋風茶碗蒸しや生クリームを使ったソースなど和魂洋才を意図した料理。二品で出た始末料理について、上野会長から、「始末はケチではなく、上等なものを買っても、すべて使い尽くせば結果的には経済的、つまり贅沢しても最後に帳尻が合えばいいという考え方」と分かりやすくレクチャーがなされた。
  3人目は『一陽』の小河原陽一さん。大阪菊菜と秋鱧で三品。3日掛かり大変な苦労をしたという鱧素麺に始まり、鱧わたを使った一品、さらに鱧の身と菊菜の和え物など、手間の掛かった料理に、「自分の発想にない料理ばかりだった。参考にしたい」との声が多数上がった。
  ヒガシマル醤油研究所の真岸範浩さんからは、発売10年目を迎える究極の淡口醤油「龍野乃刻」についてのお話も。播磨産にこだわった原料は栽培から取り組み、伝統から生まれた新しい製法・甘酒の二段仕込みで上品な甘さが実現したことなど、参加者は興味深く聞きつつ、ききしょうゆを行い、年1回の限定醸造の味わいを実感していた。
  最後に上野会長から、来年に向けて、「家庭で代々受け継がれてきたはずの料理の基礎知識が、若い世代にどれだけ受け継がれているのか、心配される昨今ゆえ、料理の常識について宿題を出したい」との意向が伝えられた。割烹、塩梅、といった言葉の意味などについて問うことで、勉強するきっかけになればとの思いと、今後の会の進め方の指針とするためだとのこと。また今年は食材をテーマにしてきたが、来年は催事料理をテーマにすることを発表。節分など、今月は何の月か、季節のみならず祭事にちなんだテーマが出される。それがまたそれぞれのお店で献立に生かされれば、大阪食文化の継承に繋がる。
  また10回出席者に、大阪料理会から大層立派な木製の看板が授与された。今回は『ゆうの』柚野克幸さん、『手崎』小川千春さん、『貴重』の広里貴子さんの3会員。

第十回大阪料理会の様子