伊佐木の共焼薫り茴香

上野 修
浪速割烹 㐂川  

昆布に代えての野菜出汁と養殖魚再考

魚の頭や粗から昆布を使って出汁をひくというのは常の仕事だが、 昆布の不漁が深刻化する中、 新たなアプローチも不可欠。また、魚介そのものについても同様。涸渇が懸念される天然にのみ依存するのではなく料理によっては養殖魚を活かすこともできるはず、 そうしたスタンスからの試作料理。蕃茄や玉葱の皮などから出汁をひき、 これを昆布に代えて使用。 さらにはあらかじめ強塩しておいた内臓なども合わせて炊くことで食材を始末をしながら旨味も高めていく。仕上げには伊佐木の鱗の唐揚げに薫り茴香を添えている。脂がのった臭みのない伊佐木だが天然が持つ独特の薫りや風味が不足している。 そこで今回の試作では茴香を養殖伊佐木に合わせてみてはどうかという試みがなされた。足りないものは補ってやればいい。まさに採長補短の大阪料理ならではの手法がここに生かされていると解釈してもよいのではないだろうか。

総評

今回の昆布に代えてのアプローチを説明する前に、 上野会員は 「真昆布がいかに偉大であるか」 を語った。 「野菜スープをどの程度まで煮込むのか」 など、 昆布に代えての野菜出汁への質疑応答が重ねられた。 次に、 養殖ならではの濃厚で独特な脂がのった伊佐木への質問も活発になされた。 上野氏はこうした質問に対し 「養殖魚には、 天然以上の特性や特色がある。 それを見いだすことで新たな料理法も生まれてくるのではないか。 と同時に食べ手側の客にはそれを用いる理由や細かな説明を料理人は欠かしてはいけない」 と自らの養殖魚への考え方を示した。

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