杉本 亨
浪速割烹 和亨
杉本亨1970年(昭和45年)、大阪生まれ。15歳で京都の料亭に入る。その後、師匠である上野修三氏の料理に見せられて、『浪速割烹 㐂川』に入り、その師匠が営む『天神坂 上野』を経て、99年(平成11)年に大阪・宗右衛門町で『浪速割烹 和亨』を開店。師匠の〝浪速割烹〟を受け継いでいけるように日々探求し、浪速の味を大切にしてます。
夏野菜の各個性を調和させ涼味ゼリー仕立に
大阪の夏といえば鱧や海老など魚介がメインとされてきたが、 夏こそ野菜の旨味を料理屋で味わってもらいたい、そんな意気込みが感じられる試作料理。大阪では夏の惣菜料理として定番とされているのが野菜の焼き浸し料理。 今回の試作ではそうした大阪好みの料理が発想のベースとなっているのだろう。 茄子やどんこ椎茸など薫りを付けたい野菜は炭火焼に、また出汁の旨味を付加させたい野菜には八方地の、 浸し処理を行っている。もちろんゼリー寄せには、 この浸し地が使用されている。 これこそが料理屋らしい野菜の焼き浸しだといえよう。ソース的なものとしては酢味噌などは夏らしいかもしれないが、 ここでは蓼味噌にすることで、 味わいに爽やかさと軽みの演出がなされている。 アフターコロナでは、海外からのビーガンをはじめ野菜オンリーでの料理が、 今後多く求められる。大阪らしい夏野菜の料理は大きなテーマとなりそうである。
総評
「各野菜の下処理がよく考えられている」 「彩りが夏らしく非常に美しい」「炭火で焼くことによる薫りの良さを強く感じた」 といった評が聞かれた。運営委員からは 「蓼ピューレには、酢よりも柑橘系のものを合わせることで、 もっと夏らしく爽やかに仕上がるのではないか」 「蓼そのものも天然のものだと、 さらにスパイシーさが実感できるのでは」 とするアドバイスがなされた。