

前田 武徳
味菜旬香「菜ばな」
低温調理と夏の薫りで冷製焼き魚に
日本料理の世界における焼き魚の常の仕事とは、 「しっかりと焼くこと」だとされてきた。 焼き方には種々の技法があるが、 つまりは熱はしっかり入れなければならないものとした。そうした意味合いからすれば、 昨今の低温調理が 「焼く」 という調理法に範疇るのかどうか。今回の試作では、低温調理法を「夏の焼き調理」 として捉えることで、従来の焼き調理では得られない味や食感そして薫りをどのように形にするのか。 そんなこれからの冷製の焼き魚へのヒントが多く感じられた。発想方法としては、 先ずは鱸を捌いた後のアラを使って出汁をとる。アラを強く焼くことで、 焼きの風味を出汁側に移し、 これに上身を漬け込むことで低温調理の際に生感の中にも焼きの風味を付けていけないか。 また今回の低温調理では、自家製の山椒オイルを使用。 これを上身にまとわせ湯煎している。 さらに夏を演出するためアラから出た身肉を涼しげな寒天寄せに、 ソースには大葉が用いられている。 生でもなく焼きでもない淡い旨味。 まさに「淡中滋味あり」の仕上がりだ。
総評
「夏の鱸といえば、 塩焼きが定番。それには鱸が持つ臭みなども関係しているようだが、 今回の鱸からは全くそうした臭いが感じられない」といった驚きの賛辞が多く聞かれた。運営委員からも 「身の切り出し方の大きさ、 そして寒天寄せとのバランスの良さ。 一皿としての仕上がり具合も申し分なく、 新しい夏の鱸料理として多くのヒントが詰まった試作だと云える」 との感想が聞かれた。
