岡本 正樹
天の川 なかなか
季節の新胡麻を使った自家製煉り胡麻で秋食材を和える
料理全般に云えることだが、 シンプルな料理にこそ味と料理に対する姿勢がよく現れる。 今回の試作では、胡麻和えを、 その胡麻から見直してみたいという料理人ならでは強い探究心が読み取れる。 先ずは胡麻から油を搾るという作業そのものを搾油器を用いて行っている。最近では実際に卓上の搾油器を客前に置いて胡麻など様々なものから油を抽出し提供している店もあり話題ともなっているようだ。料理人は料理を客に提供すると共に食材の真の姿を知らせることが求られているのかもしれない。搾油器を用いたことにより、 胡麻の絞り粕を食材として得ることができ、ここではその粕を使ってマカロン風なものを試作している。自家製の胡麻油を分離させて作った煉り胡麻で和えるのは、 同季節食材である蟹やクルミなど。 これらを柿釜でまとめている。胡麻の収穫期でもある秋深まる時期に新胡麻とこれらの旬食材を味わえるのは日本料理の大きな楽しみと云えるのではなかろうか。
総評
「胡麻を自分で搾るという発想が面白い」 「胡麻を絞った後の粕は、いろんな料理に使えそう」 などのコメントが多く寄せられていた。 また本試作で供された柿釜も会員自ら考案し柿を刳りぬく専用ナイフが使われ、 その見事な仕事に驚きの声も多くあがっていた。 運営委員からは 「発想は素晴らしい。 できれば柿釜として、ズワイガニの味の演出がもう少しあればよかったのではないか」 とのアドバイスが聞かれた。