辻 宏弥
法善寺 浅草
かつての 「晴」 食材を大阪料理に活かす
赤エイは鱶類などと共に、 最近では料理店でも家庭においても、 ほとんど食べられていない。かつては、 江州 (滋賀) や大和 (奈良) といった関西の広域な地区で 「晴」 の食材としてなくてはならないものであった。 今回の試作においては、何よりもこうした魚の面倒な下処理を見直すべきとの発想から酢を使っての無駄を出さない処理法が提案された。 そしてこの下処理後にエイの各部位を各々三種に分け、 変わり揚げとしている。先ず最初は、 ひれの先のコラーゲン質を多く含む皮を淡口と砂糖で炊き揚げる。 ここでは淡口に 「龍野の刻」 を使用することで、 さらに美しい仕上がりとなっている。 次に骨の硬い部分。 こちらは、すりおろした蓮根と合わせ饅頭仕立てに。最後に、 エイの身の部分は子芋と合わせコロッケに。 生クリームを加えることでエイの身の独特なパサつき感をなくしている。未利用魚となっているエイも、工夫次第で大阪料理の多彩な食材として使用できそうである。
総評
「三種それぞれの彩りの美しさ、 味わいのバリエーションが楽しめた」 とする賛辞があった。 料理そのものについては 「エイといえば肝がポイントとなる、 これをもっと料理に活かすべきだったのでは」 との声も聞かれた。 運営委員からは 「非常に意欲が感じられる試作だったが、 エイを普及させる狙いであれば、 もっとエイと分かるような料理法が必要なのではないか」 とした指摘なども寄せられていた。