蕪皮葛焼風豆腐と穴子の餡掛

関根 文幸
和楽 「せき根」  

1963年茨城県出身。板前の仕事に憧れ高校卒業後、大阪あべの辻調理師専門学校へ。辻調理師専門学校卒業後、同校に日本料理教員として5年間勤務する。2001年に独立し『和楽せき根』を開店。
接待や会食で無く、ファミリーをターゲットに安心感ある定番の和食を大切にしたリーズナブルなコースを楽しませる。

関西冬の名物料理である蕪を使い尽くす

大阪では節分の時期には、 干し蕪を食べる習慣があった。 これは蕪が持つ身体を温める効果で、 風邪などを防ぐという民間療法から起こったものと考えられる。蕪は名残の時期を迎えると、 外側が固くなり食するには適さないが、しかしこの皮部分から何ともいえない旨味を引き出すことができる。 故に干し蕪を味噌汁に入れて具としてだけでなく、 その味わいをも深めているのである。 今回の関根会員の試作は、 まさにそうした蕪皮の旨味を活かしながら、 また始末の心で残り皮を有効活用しようという狙いがある。ここでは蕪皮のすり下ろしを茹でて、裏濾ししたものと、 同様にスライスしたものを使って葛粉の胡麻豆腐風に仕立てている。 さらにこれを香ばしく焼き上げることで蕪の風味をも引きだしている。ただこのままでは料理屋料理にはならないので、 煮穴子と合わせ、 あしらいに蕪葉を用いての餡掛け仕立てとしている。 大阪の天王寺蕪や京都の聖護院蕪など、 関西では蕪料理が冬の風物詩ともなっている。こうした食材の活かし方を今一度、料理会では再考すべきだろう。

総評

「料理としてまとまりはよかったが、狙いとしていた蕪の風味が足りなかったのでは」 といった蕪に対する感想や質問が聞かれた。 運営委員からは 「蕪を干したものを葛豆腐に合わせればどうか」 また 「蕪の皮は湯がくのではなく塩するだけの方がよかったのでは」 といったアドバイスなども寄せられていた。 蕪は薹立ちするシーズンには葉は使いづらいものがあるが、 蕪の花芽は非常に美味なので、 こうしたものを活用するものよいのではなかろうか。

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