山本 英
はしま
鱧の魚体に合わせた調理法で旬の変化を愉しむ
骨を抜いた鱧料理。 地域によってはこれを薄造りとして供しているようだ。 それもひとつの料理の形ではあるが、 薄造りにするのなら、 あえて骨を抜く必要がないのではないか。骨がないからこそ、 自在にそぎ造りとして存分に味わいたい。 それが大阪的というものだろう。今回の骨を抜いた生鱧は、 背と腹の部分を分け、 各々の部位が持つ生鱧ならではの旨味と、 もちっとした食感が味わえる趣向になっている。 特に身肉が薄い腹身については焼き目を付け雲丹巻きとしている。全体として背と腹に分けた生鱧をまとめているのが冬瓜を使ったジュレ。摺り下ろした冬瓜は、 シンプルに出汁と白醤油で調味。 見た目も涼しげな水晶鱧に仕上がっている。そもそも鱧が本来の旨味を発揮するのが魚体が大きくなってくる秋頃から。 またその頃の鱧だからこそ骨が抜きやすくもなる。 逆に大ぶりなトロ鱧には、 骨切りはそぐわないだろう。鱧も走りから名残まで、 その折々の旬に合わせた料理法で楽しむ。 これこそが大阪的な鱧の愉しみ方といえよう。
総評
料理人なら一度はチャレンジしてみたいのが鱧の骨抜きだろう。 「いかにすれば、 身肉をはがさずに骨を抜くことができるのか」。 試食後の質疑応答は骨抜きのコツについて集中した。またこれに加えて、 冬瓜の調理法についても多くの議論が交わされていた。 そんな中、 運営委員からは「冬瓜は種と共に煮ることでより冬瓜らしい風味を残すことができる」 とのアドバイスがなされていた。