鱧の酒盗  共焼き

板倉 誠司
旬菜 喜いち  

1972年、大阪府東大阪市生まれ。調理師専門学校卒業後、大阪府内や奈良の割烹、和食店で修行し、2008年に独立。地元に『旬菜喜いち』をオープン。毎日市場に出向き、納得のいく食材のみを仕入れ。素材本来の美味しさを引き立てる味付けにこだわっている。

秋鱧を食べ尽くす、 大阪的な調理と演出法

祇園祭は鱧祭だそうで、 京都の鱧は7月で終わりを迎える。 しかし大阪では鱧の本番は天神祭を皮切りに秋の深まりと共に味そして料理法ともに彩りを深めていく。 今回の試作ではそんな8月の鱧料理に相応しい一品として考案された大阪料理といえよう。 鰹などを使った酒盗焼きという料理法は一般的だが、 ここでは鱧の胃袋と浮き袋で酒盗を自家製することで、いわゆる共焼きといった趣向になっている。 鱧を食べ尽くしたいという大阪らしい発想が面白い。 もちろん大阪の料理屋はそれだけでは終わらない。 注目すべきは、鱧の子 (卵巣) を明太子風にし鱧のすり身と合わせて「裏白椎茸」にした逸品。 特に国産の鱧に多い鱧の子の使用法に苦慮する料理屋も少なくないはず。 これを明太子風に味を加えて仕上げに梅干しの種や唐辛子を効かせるところも大阪料理らしさがあって素晴らしい。 大阪料理の中で培われた辛味の文化をさらに他の料理法に活かし復活させていただけることを期待したい。

総評

「鱧料理は、 その鱧独特な味わいをいかに演出するかにある、 今回の試作にはヒントが多くあった」 「鱧の裏白椎茸は絶品」 などの評が多く聞かれた。 運営委員からは 「鱧の子を活かすには、 昆布出汁と合わせてはどうか」 「でんぷんを使わない卵白のみのつなぎにこだわったところが高く評価できる」 また 「これぞ焼きたてを賞味する料理。 大阪割烹に相応しい」 の賛辞があった。

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