碓井豌豆とアスパラの 擂り流し片身替わり

松尾 英明
千里山「柏屋」  

春の前菜に相応しい彩りと味わいの互 (かたみ) 替わり

片身替わりとは文様の世界において使われるが、 大阪においては互 (かたみ) という字をあてる。 たがいに異なったものがひとつになることでそのメッセージ性を高めるのだ。 今回の試作においては春の彩りを食べ手に伝えるという趣向と、 さらにはこの後に続く料理にも、 こうした互違いの面白さを予感させる。 前菜として位置づけられるであろうこの料理の両主役は大阪羽曳野市の碓井豌豆とホワイトアスパラ。 いずれの食材も塩加減が大きなポイントとなる。「春苦味 夏酢ノ物 秋辛味 冬は油と合点して喰え」 とは食養学でよく云われる。それだけに炭酸や塩などは味を引き出す程度にし苦味を抜きすきすぎないように心がけたい。 擂り流しは、 豌豆は二番出汁でアスパラは煮切り酒と塩で味や濃度を加減し、 その下には煮切り酒で戻した唐墨と毛蟹のほぐし身を配することで、春の味わいに大きな旨味を加えている。

総評

「春というメッセージ性の高い料理」「唐墨を煮切り酒でもどすというのも面白い」といった評が多く聞かれた。畑会長からは 「アスパラを太白で炒めているが、 素焼きにした方がより甘味が出たのではないか。 またせっかくの毛蟹等がもう少し目でも楽しめる工夫があれば、 さらによかったのではないか」 とのアドバイスがあった。

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