上野 修
浪速割烹 㐂川
鱧出汁の合わせ酢で鱧の骨を溶かす大阪ならではの夏ノ鱧寿司
土瓶蒸しに擂り流しなど江戸時代から大阪の鱧の旬は晩夏から秋とされてきた。けれど天神祭など祭り月である7月にも食されてきてはいる。ただこうした時期に供される大阪料理の大半が酢味を効かせた鱧料理が大半であった。それほどに鱧は酢との相性が素晴らしいということなのだろう。料理店だけでなく「鱧と毛馬胡瓜のざくざく」といった酢のものは大阪を代表する郷土料理でもある。
今回の試作料理は、そんな異なった酢味で鱧鮓を味うものである。開いて皮引きした鱧に塩をし、これを鱧出汁を使った三種の合わせ酢に漬け置く。それも一週間近く漬け込むことで骨をも溶かしてしまうのだ。ひとつは、淡口醤油だれで附け焼きした鱧皮と尾のみを混ぜたシャリで棒鮨に。ふたつ目が、湯引きした鱧皮と叩いたディルを混ぜたシャリの棒鮨。そしてみっつ目が、胡麻を混ぜたシャリの棒鮨。同じ鱧をシャリでの競味としているところがいかにも浪速割烹である。
総評
「生鱧を一週間近くも漬け込むというのが信じられない驚きだった」「たしかに鱧鮓の中には骨は全く感じなかったが、どういうことか」といった鱧酢への関心の高さが感じられた。こうした問いに対して上野会員からは「いつまで漬け込むか、ひとつは骨を感じなくなる頃合いを見定める。次に合わせ酢を急速に吸水させるのがポイント」とする詳細な説明がなされていた。