山本 英
はしま
今様、天神祭りの料理を前菜で表現
天神祭の料理として食卓にあがっていたものといえば、魚介では鯵に蛸そして店屋物としての鱧の附け焼き。煉り物としての白天なども欠かせないアイテムであっただろう。今回の試作では料理屋的な天神祭の演出として、鮑や鱧が使われている。鮑は酒蒸しにし、湯むきしたトマトは、昆布〆などにして各々を蓴菜と共に盛りつける。これをゼラチンでジュレ仕立てにするわけだが、常の淡口出汁にさらに玉葱を入れて炊くことで甘みの強い大阪的な味わいとなっている。
毛馬胡瓜との鱧ざくは、ただの鱧皮ではなくハラ身を焼いて切り分け、揚げて刻んだ鱧皮と合わせて蒸すことで鰻を思わせる食感を生み出している。
飯物として餅米を使った笹巻きの白蒸し。黒板昆布に枝豆と梅干しを配している。ちなみに天神祭に白蒸しを食べる、という習慣はない。祭りに限らず、いわゆる寺社の神事を助ける神人達の食事として食されてきたもの。それが何故か最近では天神祭で売られるようになっているようである。
総評
「鮑とトマトのジュレ仕立て、その爽やかな酸味感が見事」とする賛辞が多く聞かれた。
畑会長からは「前菜としての各々の季節感、バランスそして味のつくり方が非常によいと感じた」との評も寄せられていた。運営委員からは「いわゆる惣菜料理である毛馬胡瓜の鱧ざくを料理屋的に変貌させているところに面白さを感じた」としながらも「毛馬胡瓜を事前に雷干しするなどの工夫があればさらによかった」とのアドバイスもなされていた。