ムール貝と枝豆茶碗蒸し

竹本正勝
辻調理師専門学校  

広島県生まれ。辻調理師専門学校を卒業後、同校に勤める。N.Y.の日本料理店『Brushstroke(ブラッシュストローク)』に2年間出向。現地の食材を使って和食を仕立、ワールドワイドなお客様に提供する経験を通し、改めて古い和食の仕事の大切さを痛感。「基礎技術に古いも新しいもない」をモットーに日々、学生達と共に研鑽を積み、料理人育成に努めています。

冬の牡蠣同様に、夏のムール貝を大阪料理に

江戸時代から大川に見る牡蠣船の風情は大阪冬の風物詩でもあった。貝類を美味く調理し味わい愉しむこともまた大阪料理の心だといえよう。今回試作されたムール貝は冬の牡蠣と同様に、夏に愉しむ貝類として、料理法次第では大阪において今後の需要が見込まれるのではなかろうか。一般的には西洋料理の食材とされてきたムール貝を、あえて和の食材とする。そんなところにも試作の狙いがあったように思われる。
今回の試作で注目すべきはムール貝の低温調理。60℃設定の70分加熱。貝身の縮みを最小限に抑え、限りなく生の味わいを残す。
ただ二枚貝だけにノロウィルスへの対策も万全に施さなければならない。この時期に出盛りを迎える八尾枝豆を使い茶碗蒸しと合わせ裏漉し葛粉でとろみをつける。ムール貝の蒸し汁は昆布出汁で割り調味しゼラチンで琥珀ゼリーとする。冷製にした枝豆茶碗蒸しに低温調理したムール貝、湯葉とトマトをあしらいゼリーかけとする。

総評

「ムール貝をこれほど生に近い状態で食したのは初めて」「ムール貝の旨さがダイレクトに伝わる料理」などの感想が聞かれた。運営委員からは「和食にムール貝という取り合わせは面白い。ただ、せっかくの旬の出会い物として八尾枝豆を使ったいるにもかかわらず、茶碗蒸しそのものに枝豆感がなかったのが残念」とのコメントがなされていた。

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