岡本 健二
辻調理師専門学校
大阪府生まれ。高校1年の時に始めた割烹料理屋でのアルバイトがきっかけで料理の魅力を知りました。高校卒業後は辻調理師専門学校に入学し、その後同校に勤務。日本料理の魅力はシンプルな仕立ての中に、食材の美味しさを最大限に引き出す奥深さがあると考えています。大阪料理会では毎回驚かされる発想に刺激を受け、学生指導にどのように還元できるかを考えることが、私の活力となっております。
苦味を味わいながら鮎のすべてを食べ尽くす
鮎は塩焼きにしろ、味噌を使った魚田にしろワタを抜くことなく、その苦味と共に味わうところに妙味があるとされてきた。そんな鮎の苦味に着目し、これを拡大進化させたのが今回の試作だといえよう。鮎はいわゆるオイル煮としている。80℃で2時間の加熱が終われば、これを三枚におろし、この時点で頭や内臓や中骨を取り除く。これを当たり鉢でペーストにし、裏漉したものを調味するのである。
鮎の上身は皮目のみを炙り、旨出汁のジュレ掛けとする一方、稲庭うどんを湯がいたものを冷水にとり、旨出汁で地洗いした後、先ほどの鮎ワタペーストを加えている。鮎の苦味をも愉しむ料理として塩焼きなどがあるが、食べ方が難しく料理として敬遠されぎみと聞く。鮎が持つ独特な苦味という旨味を麺に移し、誰もが簡単に鮎のすべてを食べ尽くせる今回の料理は非常に汎用性が高いものがあるといえよう。
総評
「鮎の苦味になめらかさを感じさせてくれる料理」「加熱した鮎を三枚におろす、という発想と技術がすごい」といった意見や評などが聞かれた。運営委員からは「テーマである苦味そのものに、もう少し味の厚みがあれば申し分なかったように感じた。手法としてはココアなどを隠し味に使う等があるかと思うが、さらに研鑽してほしい」というアドバイスなどがなされていた。