香茸の栗飯蒸し

片山 城
心根  

大阪好みの香茸と秋山の幸を飯蒸しに詰める

香茸はその笠の裏に毛のようなものを持っている。それが獣の皮のようであることから、これを皮茸と呼び、処によってはシシダケとも云われているようである。香茸となったのはこのカワタケが転じてのことだが、何と言っても独特な強い香りがその名を留まらせたといっても過言ではないだろう。
今回の試作では干した香茸を半夜日水に浸けたものを戻して細切りにして炊いている。これを椎茸のように汁気がなくなるまで炊きあげる。栗は渋皮煮とする。渋皮煮には様々な作り方があるが、ここでは沸騰直後に毛布で包み込み高温を保ったままじっくりと熱を入れている。
零余子は素揚げにしたものを地浸けにしている。銀杏は鬼殻を去り素揚げして塩味で加減している。さて飯蒸しだが、餅米には昆布塩水を合わせ、地がなくなるまで火入れをし、最後に火が通るまで蒸し上げている。飯と香茸を混ぜ、栗の渋皮煮の間に盛り込み、零余子と銀杏とイクラ醤油漬けを乗せ、これに山のミゾソバや彩りに背高泡立草の蕾を添え秋景色を描いている。余談だが、その昔大阪の花街では香茸を湯洗いしたその水で顔を洗う風習があった。香茸には肌をこまやかにし、顔の艶をよくする効果ありとされていたが、真意のほどは分からない。

総評

「栗の渋皮煮が絶品。是非その作り方が知りたい」「飯蒸しの硬さ加減が絶妙」などの評と共に、「セイタカアワダチソウが食べられるとは知らなかった」といったコメントも寄せられていた。運営委員からは「まさに山は食材の宝庫を実感させられる料理」とする賛辞と共に、「料理のテーマが茸であり香茸であったことを思うと、香茸をもっと前面に出した料理法であってもよかったのではないか」といった声も聞かれた。

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