久保田 博
割烹 くぼた
・大阪北新地 割烹味菜
・オランダ ホテルオークラ
・大阪北新地 料亭
・東京 青山、広尾の日本料理店
・兵庫 西宮の日本料理店
・2010年に【割烹くぼた】開業
[使用食材]
・毎朝、大阪中央市場にて仕入れ
・熊本の父親が作った野菜
・自ら船釣りに行き仕入れと称しての釣った魚
・全国の漁港から直送
料理はコース料理のみで、味の濃淡、彩、食感を大事にし、美味しオモシロイ料理を目指し献立を立てています。
和洋の発酵食品の融合で大阪料理の味を拡げる
サワラは魚偏に春と書くが、その旬は2度あり秋の鰆もまた素晴らしい。そんな秋サワラの漁期が終わる頃に近海に現れるのがサゴシである。近年、大阪湾のサワラ人気が高まっているが、サゴシもまた日本海側とは違った味わいを持つとされている。今回の試作ではこの大阪産サゴシに和洋の発酵食品を合わせることで、新たな味わいを加味するのが狙いのひとつと思われる。和洋2つの発酵食品とは、醤油諸味とチーズ。すでにこの2つを融合させたもの(モロマッジョ)が市販されており、今回はそのチーズを刻んで片栗粉をまぶしかけ、出汁そして醤油や味醂と共にこれを煮溶かすことでソースとしている。サゴシはいわゆる生鮓(きずし)としている。ここでは身肉の仕上がりにマイルドさを付加すべく、三枚に卸した柵を砂糖と塩で交互に洗い、後に〆ている。和洋の発酵食品が持つまろやかで奥深い味わいを少し脂が不足している魚介に足してやることで、ワインにも日本酒にも合う料理へと変化させることができるのではないかという、今の時代ならではの大阪料理へのアプローチだといえよう。
総評
「醤油諸味のチーズを使ったソースに驚いた。あえて表現するなら鮒寿司。いろんな汎用性が考えられる」といった感想が多く聞かれた。また質疑の多くはサゴシの生鮓についてのものが多く、砂糖と塩を使っての浸け時間による味の差などについての意見交換などもなされていた。また運営委員からは「海外においては砂糖と塩を一定の割合で混ぜた手法が用いられるが、そうしたものも参考にしてはどうか」とするアドバイスもなされていた。