長内 敬之
旬鮮和楽 「さな井」
大阪の気温を生かした発酵の妙を味に活かす
日本古来の発酵食品である味噌には全国様々な種類がある。これは発酵に必要な温度差が大きく関係している。東北などの寒冷地では発酵熟成に時間を要することから自ずと塩味がからく濃厚な赤褐色な味噌となる。いわゆる関東の赤味噌、関西の白味噌というのも味だけでなくこうした気候風土も関係していたともいえよう。さて、白味噌文化の上方では、夏期では一週間、冬季でも一ヶ月ほどで発酵が進み、味噌自体の塩味も薄く豆の味わいがよく分かるところにその特徴がある。
今回の試作では、まさにそんな発酵の妙に着目した自家製の白味噌づくりへのユニークなアプローチである。何がユニークかといえば、この白味噌は大豆ではなくヒヨコ豆を使った白味噌。常のごとく豆を水戻しし味噌づくりをするのだが、ここではその際に乾燥タモギ茸を合わせている。皮を剝いた豆に米麹と塩をし加温器で9時間調整をかけ、その後は一週間ほど熟成させている。大阪の最近の気温なら常温でも一ヶ月はかからないかもしれない。椀の仕上げは、重湯に自家製白味噌そして、こちらも自家製の玉葱麹で調味。椀種は餅銀杏を射込みの蓮根饅頭となっている。
総評
「味はまったりとしているが、味噌そのものはあっさりとしているのが面白い」「白味噌に重湯を合わせるというのがユニーク」「自家製白味噌の味も良いが、餅銀杏の出来映えが素晴らしかった」などの評が寄せられていた。
運営委員からは「ヒヨコ豆の白味噌を玉葱麹だけで調味加減しているところが素晴らしい。タモギ茸の風味もしっかり感じられる。市販の味噌だけを使うのではなく、時には自作することの大切さを今一度考える必要があるだろう」とのコメントが寄せられていた。