備中と加賀の良さを合わせ持つ河内蓮根を使い尽くす

関根 文幸
和楽 「せき根」  

1963年茨城県出身。板前の仕事に憧れ高校卒業後、大阪あべの辻調理師専門学校へ。辻調理師専門学校卒業後、同校に日本料理教員として5年間勤務する。2001年に独立し『和楽せき根』を開店。
接待や会食で無く、ファミリーをターゲットに安心感ある定番の和食を大切にしたリーズナブルなコースを楽しませる。

郷土料理を料理屋風に仕立て名物料理とする

現在の蓮根産地として知られるのは茨城に佐賀に徳島だが、ひと昔前は備中に加賀が西日本市場におけるブランドであった。河内蓮根は、本来の地蓮に加え、これら二大ブランドの蓮根を明治期に導入。よって河内蓮根にはこれらの蓮根の良さや特徴が今も色濃く残っている。品種の持ち味以上に、鮮度が旨さの決めてとなる蓮根だけに大阪料理にとって河内蓮根は不可欠な食材であった。今回の試作は、その河内蓮根を使った饅頭。
河内蓮根をおろしにかけ、蓮根の水分を除く。これに白玉に玉子の素と蓮根からとった水分(澱粉)などを混ぜ入れて蒸し器にかけている。これを丸にとり、焼いたホタテのほぐし身にしたものを射込んで粉打ちし揚げて饅頭としている。
鮮度の高い河内蓮根であれば混ぜ物をせずとも饅頭とすることはできるが、硬いものが苦手とする食べ手が増えている昨今では、時代に合った蓮根饅頭の柔らかさというものが必要とされているのだろう。
蓮根は、蓮の根はもちろん、蓮の葉や実に至るまで食することができないものはない。またそれぞれに貴重な漢方効果を有している。鮮度を最大限に活かし、無駄なく使いつくせる。河内蓮根はまさに大阪的な食材といえよう。

総評

「白玉と聞いて、逆に硬くなるのではないかと思ったが、非常に柔らかな饅頭に驚いた」「蓮根饅頭に玉子の素を入れる、というのは面白い発案ではないか」とするコメントなどが寄せられていた。
運営委員からは「白玉粉以外にも浮子などでも試してみてはどうか。今回は鼈甲餡の仕上げとなっていたが、そこに合わせていた生雲丹が非常によい取り合わせであった。蓮根饅頭もこのような工夫で十分に料理屋の一品となりうると思う」とするアドバイスも聞かれた。

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