

高橋 淳
北新地「柏屋」
1976年、大阪生まれ。辻調理師専門学校卒業後「柏屋 大阪千里山」へ入る。2022年「柏屋 大阪北新地」の料理長に就任。
大阪好みの金海鼠で演出する海山の春味
金海鼠(きんこ)はナマコの一種で褐色系が特徴であり緑系のものと区別される。昔から関東では劣等扱いされてきたが、関西ではその逆で珍味として賞味されてきた。いわば関西好みの海鼠だといえよえう。最近では北海ものが人気のようだが、特産地も時代とともに移っており、明治期には陸前金華山(宮城)産、昭和頃から能登七尾産をもって最上とされてきた。
金海鼠を茹でて冷やし、再度煮て天日で二週間以上かけて干し上げられる。ちなみに中国料理では煮干したものを光参として重用されている。今回の試作では、干し金海鼠による射込み料理が披露された。藁と共に金海鼠を五日程度かけてもどす。生雲丹にすり身を加えたものを天地を切っておいた金海鼠に射込み、これを蒸し上げている。できたものを調味した地で焚き、この金海鼠を焚いた出汁で餡を仕立て掛け、生姜を散らしている。添菜である菜の花と黄韮が色と香りで初春を予感させ、春の磯遊びを思わせる金海鼠の味わいに見事に調和しているところが何とも素晴らしい。
総評
「最近ではあまり見なくなった金海鼠の魅力を再発見できた」「金海鼠のほどよい柔らかさに驚いた」などの賛辞が多く寄せられていた。また、参加会員の数名から干し金海鼠の戻し方についての質疑応答がなされた。特に昔ながらの藁と海鼠との関連性について、各々の持論が発表された。運営委員からは「金海鼠そのものが非常に高価な食材となっているだけに、これを効果的に演出する技倆もまた問われるのではないか」とする意見なども聞かれた。

