若布三様 春味山海競

松尾 英明
千里山 柏屋  

早春山海食材を三様若芽で纏わせる味遊び

関西の若布といえば江戸時代から鳴門若布が知られている。様々な乾し方と調理法が大阪でもなされてきた。今回の試作では三様の若布の味わいと季節の山菜と魚介の取り合わせの妙を愉しむ趣向となっている。
先ずは「若布すり流し」。塩若布を水戻した後に茹でて柔らかくもどす。調味した出汁に仮漬けした後に本漬けしたものを、すり流しとしている。合わせる山菜はウルイと独活、帆立には生雲丹と山葵が射込まれている。
次は「若布羹」。若芽の漬け地で寒天をもどし、これに若布を加えさらにゼラチンを入れ羹としている。ここでの山菜は、コゴミそして味噌仕立てにした蕗の薹。寒鯛は松皮とし戻し昆布で巻いている。そしてもうひとつが「糸若布」。乾した糸若布そのものは伊勢の名物とした知られているが、ここでは塩若布を流水で洗って開きはじめたものを均等に切り揃え千切りにし、自家製糸若芽としている。ここでの山菜はタラの芽と筍。さらに貝類として北寄貝が使われている。浸し地につけた糸若布と乳化させて閉じ込めた貝の旨味が、タラの芽と筍に見事に調和している。まさに料亭料理と呼ぶに相応しい競味を愉しむ逸品といえよう。

総評

「若布を使った三種三様の違いがよく出ている」」「見事な下処理に感心した」「ただただ感動させられる料理だった」とした賛辞が多く寄せられていた。
参加会員からは北寄貝の処理の仕方、若芽羹における寒天やゼラチンの使い分けについての質問が多く寄せられていた。こうした質問に対して松尾会員は「様々な調味料や乳製品なども簡単に入手できるが、乳化ひとつにしても、日本料理店としてどうあるべきかを常に考え行動に移していきたい」とのコメントがなされていた。

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