筒井 宏樹
旬菜味空 「みそら」
1978年愛知県生まれ。高校卒業後、大阪の日本料理「菜花野」に入る。2016年、「旬菜 味空ーみそらー」を開店。
原木椎茸の魅力を大阪的に味わう
最近、全国的に行われてる椎茸の原木による栽培。あまり知られてはいないが、かつて大阪は原木椎茸の生産量が日本一であった。また、その栽培方法を確立させたのも大阪であったようだ。しかしながら次第により安易な菌床栽培にとって代わり、一時は原木椎茸そのものが皆無になるのではないかとさえ云われた。今回試作された料理に使用されているのも大阪産の原木椎茸。それと同様にたもぎ茸も使われている。原木椎茸の魅力は何と言っても、その肉厚な笠の部分が持つジューシーな茸出汁の味わいにある。それを逃がすことなく大阪的に包み込んでいるところにこの料理の魅力があるのだろう。またその出汁味を倍増させるために、河内鴨肉を合わせている。いわば原木椎茸の中に、鴨肉やたもぎ茸の出汁を共に混ぜ合わせたものを、そのまま供するというのが作り手の狙いでもあるようだ。そのために少しでも食べやすくするように椎茸の随所に隠し包丁がさなれている。箸ではなく手で食べて欲しい、という思いが詰まった一品といえよう。
総評
「原木椎茸の旨さがよく分かった」「原木椎茸は入手が難しいと思っていたが、府内で入手できるものなら一度、使ってみたい」などの声が寄せられていた。運営委員からは「原木椎茸がテーマであったが、鴨肉の味が強すぎたのが残念」「どうしも箸だと汁がこぼれるので器の選択にも配慮が欲しかった」などの意見が聞かれた。畑会長からは「たもぎ茸そのものが強い出汁が出るので、たもぎ茸は餡として掛けてもよかったのではないか」とするアドバイスもなされていた。