雪間草 蛤ノ純白煮凍り

高橋 淳
北新地「柏屋」  

1976年、大阪生まれ。辻調理師専門学校卒業後「柏屋 大阪千里山」へ入る。2022年「柏屋 大阪北新地」の料理長に就任。

食べ手を自らイメージした世界へ誘う前菜

煮凍りという料理は、そもそもが魚料理から生まれたもの。 冬季に煮魚を冷やし煮汁と共に凝固させる。 味わいとしては鹹 (から) 味が身上とされてきた。 今回の試作では同じ煮凍りではあるが、 蛤の煮汁を使ってこれを太白油で乳化させた純白の煮凍りとなっている。 前菜だからこそ、 その日の料理の季節感を目でも愉しんでいただきたい。 雪を割って顔を覗かせる雪間草、 そんなイメージが料理の原点となっている。降り積もった雪の固さは、 魚の煮凍りの固さであってはいけない。 さくっとした少し危うい固さ。それをゼラチンで表現しているのも見事。 雪の下には蕾菜にウルイそして木の芽等。乳化された地にしっかりと塩味が感じられるのは煮凍り料理として上等といえよう。 さらにまたこの塩味が蛤本来の旨味をも引き出している。日本料理における前菜の在り方に一石を投じる試作であったといえよう。

総評

「春が詰まった味わい」 「蛤真丈など蛤といえば硬いイメージがあったが、 この意外性は面白い」 などの評が聞かれた。 畑会長からは 「蛤の味、 そして雪のようにさらっとしたなめらかさは見事。 ただ、 視覚効果を考えるなら雪下にある食材がもう少し食べ手に表現できていればさらに良かったのでは」 とのアドバイスがなされていた。

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