百合根 饅頭蒸し

長内 敬之
旬鮮和楽 「さな井」  

味と香りで歳時を食べ手に知らせる大阪料理

百合根については中国の百科全書として知られる本草綱目に 「百合根の新なるは蒸して食し、 肉に和してもよく、 乾きたるは粉にして餅となして食す。 人に益あり」 とある。 日本料理の百合根饅頭は、まさにこれを料理にしたものだといえよう。今回の試作は、 その百合根饅頭に節分という味わいをプラスさせることで歳時の食としても楽しめる工夫がなされている。 実に大阪らしい発案だといえよう。節分だから大豆というだけではなく、大豆をいかに百合根饅頭に効果的に組み込むか。 ここでは大豆の戻し汁を煮干しと共に、 裏漉した百合根をなめらかにする出汁として活用し、 さらには戻した大豆をオーブンで焼くことで饅頭に大豆の香りを纏わせている。 丸の中 (あん) には、解き百合根に鴨ミンチ。 天には炒った黒豆と大豆が盛られ、 彩りを添えている。 熟練の技がなせる百合根饅頭大阪仕立てである。

総評

「食べ手に、 それとなく節分なんだと気づかせる趣向が面白い」 「節分だからこそできる大豆くささのアピール方に感心した」。 このような意見が多く聞かれた。 運営委員からは、「百合根饅頭といえば昔は硬いというイメージがあったが、 今回のものは非常に柔らかく色艶も見事。 現代の百合根饅頭への大きなヒントになるのでは」 との評がなされた。

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