北野 博稔
喜一
天王寺蕪をイタヤ貝で食す大阪版蕪蒸し椀
寒流のホタテ貝とは違って、暖流域に生息するイタヤ貝は、ほぼ日本の全域で獲れるので、 なじみ深い貝のひとつといえよう。 昔から、 料理素材だけでなく様々な加工品としても活用され、 特に淡口醤油との相性が良いことから吸物に使われてきたのがイタヤ貝である。 今回はこのイタヤ貝と天王寺蕪との相性を試みるというのがテーマとなっている。イタヤ貝と天王寺蕪のすりおろし等で真薯を作り蒸し上げる。これにを椀種として、イタヤ貝のヒモを使って、 これを焼くことで出汁を引き真昆布と共に吸い地として仕上げている。 つまりはイタヤ貝のヒモを鰹節の代用して活用しているのである。 おろし蕪を蒸すということでは「かぶら蒸し」 のひとつともいえそうだが、 天王寺蕪そしてイタヤ貝ともに余すところなく使用した料理法から見ると、 これは大阪料理版かぶら蒸椀と呼んでもよいのかもしれない。
総評
「非常にバランスのとれた椀物といった印象を受けた」 「あのイタヤ貝にこんな使い方があるとは驚いた」 などのコメントが寄せられていた。運営委員からは 「天王寺蕪の真薯は面白いが、 饅頭にとるのであればその中に何かを射込む工夫があればさらによかった」 とする意見等が聞かれた。