山芋豆腐

西野 保孝
山海料理 「仁志乃」  

昭和36年5月25日生まれ。昭和55高校卒業後、辻学園日本調理師学校入学。翌年56年4月土佐料理『司』就職。阪急グランドビル店をはじめ大阪の系列店にて勤務。平成2年独立ため退社。
生まれ育った堺市平岡町にて『山海料理 仁志乃』を開店。大阪では比較的南に位置する地の利を生かし、大阪の海の幸山の幸を生産者さんから直接買付けして四季折々の仁志乃独自の調理をしております。

 大阪らしい工夫で常の食材を夏料理に仕立てる

入梅の頃がテーマ。 この時期は食が少し細る時期でもあることから、食べやすく滋養度の高い大阪料理として試作されたのではなかろうか。山芋は昔から、 山鰻とも呼ばれる食材。 江戸時代の浪速の古書には、山芋が変じて鰻となる、 といった紹介もされている。 そうしたことから山芋豆腐の料理は昔から作られてきたが、 ここでは令和らしいユニークな工夫が随所にみられる。 ひとつは、 出汁に牛乳を加えている点。たんに味のまろやかさを狙っただけでなく、 長芋という食材の長所をうまく引き出している。 長芋はすりおろして一定の熱を加えることで独特な柔らかさが生まれる。 この微妙な熱加減を出汁と牛乳で引き出しているのである。 そしてもうひとつは、雲丹を山芋と一体化させた点。 山芋の中に蒸した雲丹を攪拌させることで雲丹が山芋に絶妙な風味を付けている。 かつての大阪料理は、鱧の擂り流しなど、 常の食材を食べやすく加工し、 これを冷やすなどし、 暑さの増す時期に、 喉越しがよい料理屋料理としてきた。 今回の試作もまさに現代版大阪料理とよぶに相応しいものといえよう。

総評

「豆腐としての硬さが絶妙」 「喉越しだけでなく、 雲丹と合わせたことによる白とオレンジの色合いも食欲をそそってくれる」 などの評が寄せられていた。 質疑応答は寒天かゼラチンかアガーか、 それぞれの使い分けに集中。 畑会長からは 「今回は寒天が正解。 しかし長芋は全卸しをしないで少し豆腐の中に山芋の食感を残すべきだったのでは」 とするアドバイスも聞かれた。

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