つくね芋白味噌仕立て

山本 英
はしま  

始末の心で正月食材を早春料理に活かす

お節料理などの正月食材を活用しながらも、正月とは違った早春の料理屋らしい一椀に仕立てる。大阪では元日の雑煮が白味噌仕立て、そして翌日は清汁仕立てと、異なった風で、三が日の祝い膳がしつらえられる。本来は白味噌文化であった大阪において清汁が作られたのは、江戸の武家的な作法を真似たものともいえそうだが、その実は商都らしい、正月食材を無駄なく美味しく食べる在り方として定着したものと考えるのが妥当だろう。今回の山本会員の白味噌仕立て椀にも、そうした大阪の料理屋らしい工夫が随所に感じられる。特に吸地である白味噌に新酒の酒粕を加えることで、正月とは違った気分を味で演出できているのではないか。さらには餅には少し食傷ぎみの客に対し、つくね芋をとろろにし、白味噌の地で炊くことで餅とは違った柔らかな、面白い食感と味わいを生み出している。さらに蕪や牛蒡といった冬食材とは別に、早春食材である花菜を加えているところもよい。特に塩茹でにした後、葉の部分には和辛子で別味を付けているのが、早春椀らしさを食べ手に感じさせるのではないだろうか。

総評

「白味噌ベースの吸地が、とてもよかった」「白味噌と酒粕そして柚子のバランスが見事で、旨味もしっかりと感じられる」。このような賛が多く聞かれた。運営委員からは「金時人参や牛蒡などが少し固く感じられたので、もう少し食べやすくした方がいいのではないか」とするアドバイスなどが寄せられていた。

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