魚庭(なにわ)あこう

坂本 晋
割烹「味菜」  

岐阜県高山市出身
下呂温泉吉泉館吉川俊行と大阪は神田川俊朗につき修行し、28歳で独立。
現在北新地で43年目。
食材にこだわり中央卸売市場と産地直送からの取り寄せで旬の食材で料理するよう心がけています。特にその中でも大阪物の食材でコースの中の一品をつくっています。
淀川の鰻、蜆、鯊や大阪のなにわあこうを季節によって取り入れてます。
大阪は出汁文化なので出汁の組み合わせを追求しています。
素材の味を引き立てるよう努力しています。

アコウ香梅蒸し

大阪湾が魚庭(なにわ)の海と呼ばれていることから、ここで水揚げされたキジハタ(アコウ)を近年、大阪府がブランド化。坂本さんは、「大阪湾で獲れる1㎏超えの魚庭アコウは脂がしっかりのっていて、持ち味が深い」と、テーマ食材に選んだと言う。まずは、アラに塩をして霜降りし、昆布と共にスープをとる。切り身は、味噌ダレを塗り、刻んだワサビの茎を重ねて、色止めのサラダ油を塗った露地ものの大葉で包んで、蒸している。味噌ダレは、田舎味噌を朴葉の上で香りよく焼き、すり鉢で梅肉、アコウのスープと擂り合わせたもの。仕上げにかけたあんは、アコウのスープを塩と少しの酒で塩梅し、葛を引いている。だしとすり胡麻、酢橘で軽く味を漬けた針茗荷、薄味に炊いた南瓜を添えて。

アコウ錦紙巻き

味の決め手となるは、変わりネギ油。なんと、坂本さんは、魚庭アコウの内臓の脂に難波葱(なんばねぎ)を合わせて作っているという。「1㎏超えの魚庭アコウは内臓がしっかりしているので、これをちょっと生かしてみようかと」。内臓の脂に水少々を加え、弱火で水分を飛ばすようにフライパンでじっくり加熱すると、アコウ脂ができる。ここに笹切りの難波葱を入れて薄塩をしたもの。身は薄くそぎ切りにして昆布で軽く押しておく。錦糸玉子でこの身とネギ脂を巻き、弱火で焼き上げる。ソースには肝を使う。酒蒸しして裏漉し、「香梅蒸し」のスープに、煮切った梅酒、淡口醤油で味を調える。鮮やかなオレンジは、焼きパプリカのソース。裏漉しし、こちらにも先のスープを加えて、塩で塩梅し、煮凝らせている。さらに、皮を揚げたもの、焼いたものの両方を添え、魚庭アコウを余すところなく盛り込んだ。

総評

「アコウスープのあんが旨い!」と試食中、各テーブルから声が上がったのは、「香梅蒸し」。大葉の風味の鮮烈さ、そこに忍ばせた焼き味噌のアクセントにも、賛辞が寄せられた。畑会長も「今は日本料理界で派手な料理が増えているが、こうした地に足の着いた料理はやはり心に響く。針茗荷煮に施された仕事も丁寧で、細やかなところまで計算されている」と絶賛。仕込んでおけば一気に仕上げることができ、大人数の宴会にも適している、という面でも関心の高い発表となった。続く「錦紙焼き」は、内臓の脂も使うという発想と技に質問が集中。坂本さんは料理の全工程をきっちり動画に撮って、これを映写しながら事細かく解説し、「内臓の脂だけを真空にして冷凍し、貯めておくとよい」といった仕込みの裏技も話してくれた。畑会長は「パプリカのソースが絶品。持ち味のよさを最大限に引き出している。着物ソースとのバランスも良く、ネギ脂の風味や食感も利いている。感激しました!」と締めくくった。

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