大阪料理会│第五回の様子

  3人の料理方が、野菜と魚各1品を大阪風に料理する―というスタイルも定着してきた。会長の上野修三さんは「魚で言えば、刺身や焼き物はどこでもやるが、実は大阪的に美味しいのは頭や尻尾。アラにしゃぶりつくのも大阪なら許されたものだが、世の中が上品になってアラは残されてしまう。なので、現代風にしつつ大阪らしさを出したものができないかと皆さんに智恵を出してもらい、それを何とか商品化できないかとがんばっている会です」と改めて冒頭に挨拶した。
  料理はまず『ゆうの』の柚野克幸さんが、河内一寸蚕豆と鯔を調理。大きさが特徴の豆だが、富田林で種豆として作られているのみで、今は一般販売はない。「兵庫にも武庫一寸があり種豆を東北に売っているが、1年目は大きな豆ができるのに、翌年植えると小さくなる」と辻調理師専門学校の畑先生も、この豆の栽培の難しさを語った。「でも使う人が居れば作る人も出るはず」と上野さん。柚野さん工夫の鱗焼の面白さ、寄揚げで油との相性の良さなど、参加者も改めて知り興味を持った様子。
  もう1つの食材は鯔(ボラ)。「3週間前から探したが、2日前にようやく泉州から1本入った。田舎酢味噌、あら炊き、竜田揚げ、ブイヤベースにしてみたが臭みが気になる。臭みと闘うために燻製にしてやっと形になった」と柚野さんは苦労を語った。「そんなに臭いがありましたか」と上野さん。「大阪では寒ボラはよく使った大衆的な魚。出世魚でエナ、オボコ、スバシリ、ボラと、太閤さんのように名を変えながら出世する。『すし萬』さんの雀鮨は、元はボラを使ったし、昔は養殖鯛の代用にもした」と話した。
  ここで上野さんから飛び入りのフカ(サメ)が供された。「昨日まで生かして朝〆ました。昔からやってる湯引きで少し生っぽさを残してます。ちなみに酢味噌の味噌は、ヒガシマル醤油の白味噌。甘くなく辛みがある」と上野さん。臭みはなく、意外なほどきれいな味わいに会場もざわめく。大阪木津市場の太田雅士さんも「ボラやフカは忘れられた魚」と解説。「沖で上がっても捨てられている。夏の居つきのボラは泥臭いと言われるが、昔は氷で洗って酢味噌で食べるという智恵があった。また大阪湾に産卵のためにくる冬のボラは素晴らしい飴色をした白身で、鯛の造りだといえば多くが納得するほど美味しい。フカやアカエイも活けならアンモニア臭もなく、きれいな白身。湯引きは泉州の素晴らしい食文化。資源を無駄にしないためにも、また取り上げてやっていただけたら有り難い」と話した。
  続いて『菜の菜』の佐野亨一さんが、鮎並と泉州貝塚早生玉葱を調理。淡路から明石辺りで上がるはずの鮎並だが、「地元泉州でも上がっていない」と佐野さん。「あぶらめとも呼ばれるアイナメは、上品な白身なのでどんな風にも使える魚なんだが、旬なのに上がらないとは!」と上野さんも嘆く。アラを利用した鮎並御飯には「身をせせるのが大変だったでしょう」と『さな井』のご主人が労った。また、新玉葱は「生のママが一番。ぱりぱりで甘くて旨い。持ち味を壊さないように工夫した」と佐野さん。いま、泉州でよくあがるエビジャコ(トビアラ)やガッチョを添えてあり、「昔は肥料にしたものだが、旨いものです」と上野さん。
  『味菜』の坂本晋さんは、破竹とハマチを担当。「普段は甘辛く炊いたり、若竹煮にするが」今回は信田巻で。「青くなりかけたのを中国ではメンマにする。香りのもの」と畑先生の解説。ハマチは背と腹それぞれの特徴を生かして2品を調理。「アジや鰯でよくやるが、ハマチのなめろうは珍しい」と上野さんの言葉に多くの参加者が頷いていた。
  途中、ヒガシマル醤油褐、究所の真岸範浩さんから「ヒガシマル醤油の種類と使用方法」についての分かりやすいミニ講座もあり、和やかな雰囲気の中、参加者に刺激と智恵を与えた会は無事終了した。

第五回大阪料理会の様子