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大阪料理会とは 組織メンバー 今月の大阪料理 活動レポート
今月の献立 〈第37回〉
2014年 1月

大阪料理会、第4期のスタート。今期からは運営スタイルが代わり、抽選によってランダムに選ばれた3料理人が協同でその月のテーマに挑む。前菜担当がひとり、魚介ならびに野菜の2テーマを2料理人が各担当し合計5品を発表する形となる。3料理人が一丸となって、その月のテーマを担当するだけに、会員間のコミュニケーションも問われるところだ。1月は偶然にも割烹料理店が揃ったことから、浪速割烹らしい試作が次々と発表された。


小河原 陽一さん 小河原 陽一さん
島之内『一陽』
坂本 靖彦 坂本 靖彦さん
北新地『さか本』
松尾 慎太郎さん 松尾 慎太郎さん
北新地『弧柳』
お店HP
小河原 陽一さんの前菜 坂本 靖彦さんの献立 松尾 慎太郎さんの献立

◆1月のテーマ食材/魚介篇「鯨」

【料理名】
鯨赤肉と本皮の角煮 林檎酢風味

大阪の冬の食材のひとつ、鯨。鯨料理といえば、はりはり料理が有名。しかしここでは生の鯨肉と、干した本皮とのコンビネーション料理が試みられている。先ずは本皮を糠で戻す。赤肉と本皮を交互に挟んで糸でしばり、これをフライパンで焼き目を付けながら、出汁や林檎酢を加えて炊く。炊いた出汁は葛でとろみを付け肉に掛けられている。鯨が使用する種類によって大きく味わいが異なるが、今回の試食では比較的入手しやすいイワシ鯨が使用された。


◆1月のテーマ食材/蔬菜篇「高槻原木椎茸」

【料理名】
高槻原木椎茸 干椎茸チーズ掛け

今回の松尾氏がチャレンジしたテーマは、同一の食材で生のものと干したものとを合わせればどれだけ味わいの可能性が広がるか。先ずは原木椎茸の生と干したもの。干し椎茸は牛乳で戻しておく。さらに干し椎茸は粉末にし、これから濃厚な出汁をとる。これにクルトンを浸しさらに乾燥させる。牛乳に浸した椎茸は2時間程度蒸しておく。牛乳を温め加減し、すだち酢で分離させこれを濾して冷やしておく。濾した汁を加減し、これで干し椎茸を炊く。生の原木椎茸は直焼きし、その上に椎茸チーズと炊いた干し椎茸やクルトンなどをのせている。生の原木椎茸は焼いたままでも充分に旨味があるが、これに干し椎茸の旨味を合わせればどうか、という問いかけでもあるだろう。




【総評】

原木椎茸の旨さはもちろんだが、チーズと椎茸の相性、さらには干し椎茸の新たな可能性に気づかせてもらったという声が多くあった。ただ、原木椎茸は会場のサラマンダーを使用したため、炭火で味わえるような旨味が少なかったことが残念との意見もあった。鯨の料理については、林檎酢がとても良いアクセントになっているという感想。また質問としては鯨肉の解凍方法についての様々な意見が出た。冷凍状態のまま氷水に5時間程度入れると良いという声、さらには果実の持つタンパク質分解酵素の力によって鯨肉を柔らかくできないかといった方法論の意見交換がなされた。いずれにしても大阪の食文化である鯨肉の可能性に挑んだ料理は賞賛に値するものといえよう。

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撮影/藤澤 了 文/笹井良隆