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大阪料理会とは 組織メンバー 今月の大阪料理 活動レポート
今月の献立 〈第38回〉
2014年 2月

大阪料理会は、概ね割烹店と料亭によって構成されている。では、その料理上の違いとはどこにあるのか。今回の大阪料理会では前菜料理を、料亭界の雄として知られる高麗橋吉兆が担当。湯木副会長自らが前菜料理を以て、料亭料理の在り方を示した。またテーマ食材では、これまで料理人に敬遠されぎみであった「黒鯛(チヌ)」が取り上げられ、黒鯛料理のこれからに一石を投じる提案などがなされた。


湯木 潤治さん 湯木 潤治さん
高麗橋 吉兆
お店HP
中村 正明 中村 正明さん
和洋遊膳『中村』
畑島 亮さん 畑島 亮さん
キュイジーヌ・大阪・リョウ
お店HP
湯木 潤治さんの前菜 中村 正明さんの献立 畑島 亮さんの献立

◆2月のテーマ食材/魚介篇「黒鯛」

【料理名】
黒鯛の糀焼 潮仕立

大阪湾は昔から茅渟(ちぬ)の海と呼ばれてきた。その茅渟が黒鯛のことかどうかは定かではないが、いずれにしても黒鯛は大阪湾で獲れる主なる魚種であることは間違いない。しかし黒鯛(ちぬ)は、獲れる場所などにとって身に独特な味や匂いを持つとされる。今回は泉州沖の寒の黒鯛が使われた。三枚に卸した黒鯛、その上身は塩麹に浸け、アラには強塩。この頭とアラを霜振りし、船場汁に倣い潮出汁をとっている。木綿豆腐の水気をとり、卵白などでせせり身と共に「けんちん地」に。これを油で揚げている。先ほどの上身を取りだし焼き、けんちんと共に椀種とし潮出汁が張られている。黒鯛の上身はそれが黒鯛だと分るように黒い皮目が残されている。中村氏は今回の料理のポイントとして、「黒鯛を食べているということを客に分って食してもらう。つまり黒鯛のクセというか個性を楽しめる料理を提案したかった」と料理説明の中で語っていたのが印象的であった。


◆2月のテーマ食材/蔬菜篇「八尾若牛蒡」

【料理名】
若牛蒡と豚燻製 粕汁仕立

かつて上野修三相談役が創案した「若牛蒡のごぼ天」からヒントを得たという中村氏の一品。針打ちした豚バラは野菜を湯がいた塩水に漬け込む。豚バラを取りだし八方出汁で煮た後に冷ます。若牛蒡はケタ切りし炒め、サッと煮ておく。豚バラ肉を煮た出汁で粕汁を合わせ、豚バラ肉は桜チップで燻製にしている。この豚バラ肉をスライスし、若牛蒡の芯として巻いて三つ葉で縛っている。いわば豚バラを使った若牛蒡の八幡巻といったイメージ。若牛蒡の葉の部分は灰アクを使わずにさっと湯がき油で炒める程度に処理されている。
若牛蒡を余すとなくすべて使った料理のひとつといえよう。




【総評】

寒の黒鯛にはほとんど臭みがないことへの驚きの声が多くあった。また黒鯛でとった潮の出汁が非常にあっさりとした旨みを醸し出していることへの賛辞もあった。但し、けんちんに対しては、どうしても椀種としては、黒鯛の上身よりもけんちんが勝ってしまうのではないかとの意見が聞かれた。また、もっとチヌそのものの味わいを出してもよかった、といった声もあがっていた。黒鯛の上身の皮が意外にも柔らかかったのは何故かという質問に対しては、中村氏は「塩麹が大きく関係している」と回答した後、自身が体験した魚と塩麹についての説明を行った。次に若牛蒡料理については、いわゆるベーコンを作った出汁で粕汁を作るという発想が面白いという声があった。酒粕はちょうど新粕の出る時期であったことから、中村氏が蔵元から直接に購入したという、圧をかけていない粕が使用された。市販の酒粕とは違った風味の強いこの酒粕に対する質問も多くあった。

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撮影/藤澤 了 文/笹井良隆