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大阪料理会とは 組織メンバー 今月の大阪料理 活動レポート
今月の献立 〈第41回〉
2014年 5月

上野相談役曰く「回を重ねる毎に、内容が深くなっている」。第四十一回の大阪料理会はまさにその言葉を象徴する内容となった。泉州玉葱を果実のように扱うといった斬新な発想があるかと思えば、日本の調理の原点ともいえる米糠に今一度着目した糠味噌煮の料理など、いずれも2時間の時間枠の中では収まりきれない内容の深さであったといえよう。


吉良 健太郎さん 吉良 健太郎さん
料亭 深川
ぐるなび
久保 是人 久保 是人さん
喜川 浅井
お店HP
ぐるなび
北野 博一さん 北野 博一さん
喜一
お店HP
ぐるなび
吉良 健太郎さんの前菜 久保 是人さんの献立 北野 博一さんの献立

◆5月のテーマ食材/魚介篇「メッキ鯛」

【料理名】
喜一流 糠味噌煮

糠味噌煮という料理法がある。糠床は漬物用として知られているが、この糠をいわば調味料として料理に応用するというのが今回の料理。北野氏によると同料理法が今も九州地方に残っているそうである。先ずは糠床を作るのだが、煎った糠に塩分(約3%)の水でこねていく。糠床に酒粕・木の芽・柚子皮などを入れ、これを毎日かき回すのだ。約一ヶ月以上発酵させた糠床に、メッキ(黄)鯛を三枚に卸した上身を3日ほど漬け込む。その後にこの上身を水に晒して塩分を抜き、鍋にとってから酒などで戻して煮込んでいく。そこに野菜などが入った糠を入れ込みさらに煮込んでいくのだ。
北野氏が調査したところによると、「米糠に塩を配して発酵させた調味材(糂太味噌)があり、明治年間頃までは収穫期の新糠を味噌の代用として副食する地方もあった」そうである。今回の糠味噌煮のルーツはそうしたところにあるように考えることができるだろう。


◆5月のテーマ食材/蔬菜篇「干瓢(かんぴょう)」

【料理名】
干瓢と蓬蕨餅の鳴戸巻 野菜清し仕立て
干瓢と豚ベーコンの博多煮凍り

大阪を発祥とする干瓢。夕顔の実の内側を剥き干したもので乾物が発展した大阪ならではの食材ともいえよう。しかし、この干瓢は現在、ほとんどは栃木県産が主となっており、しかも漂白されているため出汁を利用することができなかった。今回は北野氏が干瓢農家を訪れ、また滋賀県に残る無漂白干瓢を入手しての挑戦となった。無漂白干瓢はさっと水洗いだけ、これを水戻しした後に二番出汁に淡口醤油で柔らかく煮込む。この干瓢の水分を切って片栗粉をぬっておく。鳴戸巻の芯の部分は、豆腐をベースに蓬ペーストの入った飛龍頭地で鳴戸巻に。野菜清しは、人参、キャベツ、玉葱、白菜などを鍋一杯に入れ落とし蓋に圧をかけて煮込む。この野菜出汁に一番出汁等で味を整え最後に卵白であく取りをしている。豚ベーコンの博多煮凍りは、ベーコンと干瓢(仕込みは同じ)を四段に重ね、野菜の清し汁をベースに、板ゼリー、寒天の煮凍り地を作り一段づつ流し込み冷やし固めている。




【総評】

単に漬物用としか考えていなかった糠床を調味料として見直してみてはどうか。今回の北野氏の提案に会員は全員衝撃を受けた。食材としてはメッキ鯛が使われたが、さらにいろんな食材で試してみたい、といった感想も多く聞かれた。また糠床の作り方そのものについての意見交換もなされ、様々な作り方が参加会員からも披露された。干瓢料理については、干瓢の大阪的な出汁の味わいへの質問。今回の野菜出汁についての意見があった。中には「昆布と鰹の出汁以外のものを店として、今後考えていかなければならないと思っていたところだったので非常に勉強になった」という声もあった。最後に総評として上野相談役から「昔の料理法を今一度見直し、そこから現代に活かせるヒントを得ることは意義深い。是非そうした分野にもチャレンジしてほしい」といった激励がなされた。

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撮影/藤澤 了 文/笹井良隆