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大阪料理会とは 組織メンバー 今月の大阪料理 活動レポート
今月の献立 〈第42回〉
2014年 6月


大阪料理会では大阪産の食材がテーマとなることが多い。偶然のことだが、今回は会員店の中でも特に大阪産食材を使っての日本料理に注力している店による試食勉強会となった。バラエティに富んだ夏の大阪産食材、魚介だけではなく初登場となる「なにわ黒牛」なども紹介された。また今回は会長・相談役共に私用ご欠席となったため3名の運営委員と中本編集長(あまから手帖)がコメント役に就いた。


早川 友博さん 早川 友博さん
北新地「小嘉津」
お店HP
ぐるなび
富田 龍司 富田 龍司さん
スリーアローズ「とみや」
城崎 栄一さん 城崎 栄一さん
吹田「じょう崎」
ぐるなび
早川 友博さんの前菜 富田 龍司さんの献立 城崎 栄一さんの献立

◆6月のテーマ食材/魚介篇「大阪なにわ黒牛」

【料理名】
なにわ黒牛蒸焼蕃茄味噌掛け
朝顔茗荷&蛇ノ目毛馬胡瓜

大阪阪南市の高橋牧場から出荷される黒牛。今回はモモ肉を使用。肉にタンパク質分解酵素を持つキウイの果汁を塗り半日置く。調味後に焼き目をつけオーブンで約1時間。中心温度を58℃ほどになるのを細かく心温度計で確認して後に取り出している。トマトはオーブンで焼き、吹田市産の桜味噌に胡麻油で炒めたドライトマトを混ぜている。こうしてローストビーフのようになった肉に、先ほどの蕃茄味噌が掛けられている。
付け合わせの朝顔茗荷は、茗荷をばらして湯がき甘酢に浸け、次に山の芋で寿司として茗荷で包み、油で揚げて朝顔のガク片を作っている。同じく、蛇の目毛馬胡瓜は、胡瓜の芯を打ち抜き、湯に落とした後に冷水そして昆布出汁に浸す。奈良漬けにした毛馬胡瓜が抜いた芯に詰められている。


◆6月のテーマ食材/蔬菜篇「貝塚澤茄子」

【料理名】
澤茄子葛豆腐

水茄子は全国的に有名な大阪野菜だが、現存する水茄子には3つの種類がある。ひとつは、いわゆる一般に漬物として流通している巾着型水茄子。もうひとつが、貝塚市の山側で生産されている馬場茄子。そしてもうひとつが同じく海側で生産されている澤茄子。
今回は巾着茄子の原種ともいわれいる澤茄子を使った料理。茄子を薄く剥き、青色部分と白い身に切り分けてミョウバンに浸けている。青い部分は油で揚げ冷蔵庫で色止めし刻む。白い部分は炭酸塩水で湯がいた後にペーストに。葛粉に出汁、酒、塩を入れて調味して煉りあげ直前にペーストの茄子と刻み茄子を流し函で固められている。できあがった豆腐は、絞り生姜をおとし美味出汁をはって供される。




【総評】

和食に肉料理は意外と浸透している。これは肉を好む客が増えていることにも関係している。日本料理で肉をどう提供するかも今後の大きな課題となるだろう。
今回の肉料理では和風な蕃茄味噌という存在が面白い。会員からはキウイではなく他の果実ではどうか、との質問があったが、城崎氏からは「他の果実では酸味が強すぎたり味への影響が懸念される」との返答がなされた。蕃茄味噌への質問が最も多く、肉では茄子などの田楽味噌として使ってもいいのではないかとの声もあった。なにわ黒牛については、いわゆるブランド肉ほどは高価ではないが、脂身が多いため歩留まりはあまり良くないのではとの懸念もあった。
澤茄子を使った料理では、夏らしい一品との賛辞が多くあった。また実際に生での試食もなされた。非常に瑞々しい食感に驚きの声があがり、運営委員の中からは「料理の技はどこまで行っても、食材そのものが持つ高さを超えることはできないと思う」との感想が述べられたのが印象的であった。

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撮影/藤澤 了 文/笹井良隆