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大阪料理会とは 組織メンバー 今月の大阪料理 活動レポート
今月の献立 〈第48回〉
2014年 12月

本年最後となる大阪料理会。大阪の代表的な冬野菜として知られる「高山牛蒡」や「天王寺蕪」が野菜のテーマに、また魚介では泉南沖の「赤舌鮃」がテーマにあげられた。前菜では、料理屋の商売始めにふさわしい何とも大阪的な「十日戎」がテーマに選ばれている。いずれの料理も、今年最後を締めくくる大阪料理会ならではの内容といえよう。


河村幸貴さん 河村幸貴さん
割烹「作一」
お店HP
ぐるなび
長内敬之 長内敬之さん
旬鮮和楽「さな井」
ぐるなび
西野保孝さん 西野保孝さん
山海料理「仁志乃」
お店HP
ぐるなび
河村幸貴さんの前菜 長内敬之さんの献立 西野保孝さんの献立

◆12月のテーマ食材/魚介篇「赤舌鰈」

【料理名】
赤舌鰈鳴戸巻き蒸し

赤舌鰈は大阪の泉州地区では、牛の舌などとも呼ばれ親しまれている冬の味覚。料理屋というよりも家庭の食材として長く扱われてきたが、今回はこれをあえて料理屋風仕立てとしている。三枚におろした赤舌鰈に薄塩をし、アラの部分も脱水シートに。中骨などは素揚げしてから焼いて砕く。これを使って丸仕立ての出汁(スープ)をとっている。おろした上身は切り揃え、身の皮を剥いてミンチにし玉子の素、片栗などで擂り身に。上身を開き擂り身を塗りパプリカや三度豆などを入れた後に叩き鳴戸に巻く。これを蒸し、先ほどの焼き骨スープを餡掛けにし、白髪葱と生姜が天盛りされている。


◆12月のテーマ食材/蔬菜篇「高山牛蒡」

【料理名】高山牛蒡摺り流し

牛蒡の味わいの多くは香りと食味にある。牛蒡らしい牛蒡が少なくなった現代、高山牛蒡の持つ本当の牛蒡らしさが注目されている。今回の料理は、まさにそのような高山牛蒡の真の味わいを凝縮させた一品となっている。牛蒡の表面は笹がきとし、4分の3ほどを一晩干して金平牛蒡に、残った中心部は糠湯がきしておく。干し貝柱を昆布と共に浸け貝柱を戻す。干した牛蒡を使って出汁をとり、糠湯がきした牛蒡、貝柱、金平牛蒡に酒を加えて圧力釜で焚きスープと具に分け、さらに細かく砕いて裏漉しに。こうして作った牛蒡のペースト、牛蒡出汁に酒、吉野葛を合わせ、葛豆腐を作り茶巾にとっている。先ほどの牛蒡出汁とは別に、干し牛蒡に洗い米などを使い、煮詰めて焚いた後に絹濾しにしている。最後に干し牛蒡のとろみ出汁、貝柱入り牛蒡ペースト、貝柱汁、一番出汁を合わせ摺り流しの牛蒡出汁として葛豆腐にはり、素揚げした牛蒡や山葵を天盛りとしている。




【総評】

赤舌鰈を使った料理では丸仕立てとしているところが良かった、との評が多くあった。また赤舌鰈の全てを使いながらもアクセントしてパプリカを合わせたことで絶妙の食感を生んだのではないか、との声もあった。ただ、擂り身に使われている片栗が気になったので、これを吉野葛にすればさらに良かったといった意見も出された。また泉州地区の会員の中からは、赤舌鰈は冬の風邪ぎみの時に粥で食べる習慣がある、料理屋でも冬時期にこうして季節限定食材として取り入れてみるのも面白いのではないか、との提案もなされた。
次に高山牛蒡の料理へは、絶賛の声が多く集まった。「牛蒡の味わいは失われやすいもの、しかしこの料理は香りはもちろん牛蒡の旨さのエッセンスを凝縮させている」との賛辞もあった。できあがった料理そのものはシンプルなように見えるが、極めて高度かつ複雑な調理技法に裏付けられていることに驚いた、また牛蒡と貝柱の相性を改めて知ることができたといった評などが各テーブルから寄せられた。

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撮影/藤澤 了 文/笹井良隆