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大阪料理会とは 組織メンバー 今月の大阪料理 活動レポート
今月の献立 〈第51回〉
2015年 3月

市場に並ぶ食材の中に、大阪の春を感じさせるものが顔を見せ始めた3月。今月は八尾の若牛蒡や一寸蚕豆といった春らしい食材が選ばれている。また春の大阪料理では明治の頃から定番であった蛤が魚介のテーマとなっている。住吉の浜で名物となっていた蛤だが、今様の大阪料理としてどのように料理されたのか楽しみなところだ。


岡本 正樹さん 岡本 正樹さん
枚方「天の川なかなか」
お店HP
布谷 浩二 布谷 浩二さん
北新地「ぬのや」
お店HP
ぐるなび
浦上 浩さん 浦上 浩さん
北新地「石和川」
お店HP
ぐるなび
岡本 正樹さんの前菜 布谷 浩二さんの献立 浦上 浩さんの献立

◆3月のテーマ食材/魚介篇「油目」

【料理名】油目の真丈椀

油目を使った椀物といえば一般的な葛打が知られているが、それだけではない油目椀物の可能性を探る料理だといえよう。水洗いした油目を3枚に卸して腹・中骨をとり、そぎ切りにし両面に薄塩し片栗粉をつけ出汁で湯がいている。頭と中骨は強塩し霜降りに。水・酒・昆布で出汁をとり、頭と中骨についた身をほぐし、すり身を合わせておく。ラップに葛打ちした上身2枚とすり身をのせて茶巾にとって蒸している。先ほどの出汁とまぐろ節の出汁を合わせて張っている。


◆3月のテーマ食材/蔬菜篇「蚕豆」

【料理名】蚕豆五種盛

空豆という食材をいろんな側面から突き詰めた試作料理の登場だ。ひとつの莢(さや)の中に詰まった空豆。それぞれの豆に、揚げる。湯がく、焼く等の調理技法を駆使しながら「海鼠腸・雲丹・唐墨」といった三大珍味を合わせるとどうか。また、通常は捨てられる外皮そして中綿を美味しく食するにはどうすればいいのかといったおそらく誰も試みたことのないことへの挑戦も行われている。
空豆は外皮からはずして湯がき、外皮も湯がいて水におとし、スプーンで中綿もとって利用されている。生雲丹をはさみ包み揚げた空豆、皮霜した油目を昆布〆にし包んだ空豆、裏ごしした唐墨を射込んだ空豆、このわたは、蒸した道明寺粉と合わせ空豆ではさんでいる。中綿をとった外皮は密に漬込み低温でサッと揚げて乾燥。中綿は味醂や昆布出汁と合わせ「空豆中綿葛豆腐」としている。




【総評】

油目を使った料理では、椀種へのユニークな工夫もさることながら、油目と昆布出汁だけではない、まぐろ節の出汁を使った絶妙な合わせ出汁の妙が話題となった。どうしても油目だけでは足りないものに、何をプラスして椀物として仕上げるか。その部分に質問が多くなされた。
また空豆の五種盛には評というよりも会員からは驚きの声が多く聞かれた。空豆の外皮だけでなく中綿までも料理の食材として活用し、見事な一品に仕上げられていることへの賛辞が相次いだ。また料理だけではなく、空豆を五種盛としているところが食べ手への期待感を高める演出しても優れているという声もあった。最後に総評を行った上野相談役からは「大阪料理の始末の在り方、そのレベルが回を重ねるごとに高まっている。非常に喜ばしいことであり、大きな実績ともなっているではないか」とのコメントがなされた。

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撮影/藤澤 了 文/笹井良隆