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大阪料理会とは 組織メンバー 今月の大阪料理 活動レポート
今月の献立 〈第55回〉
2015年 7月

今年も酷暑となった7月の料理会だが、会場には1時間ほど前から多くの会員が顔を出しはじめた。というのは畑会長の意向で、片町『はしま』の山本氏による「鱧の骨抜き」の実演が行われていたからだ。さて本会では土用らしいテーマが並び、「淀川天然鰻」を使った試作料理なども披露された。また今回からは大村屋製の胡麻による「胡麻の可能性に挑む」の新シリーズがスタートしている。


畑島 亮さん 畑島 亮さん
「キュイジーヌ大阪リョウ」
お店HP
城崎 栄一さん 城崎 栄一さん
「旬屋 じょう崎」
ぐるなび
小川 健さん 小川 健さん
『大阪あべの辻調理師専門学校』
お店HP
畑島 亮さんの前菜 城崎 栄一さんの献立 小川 健さんの献立

◆7月のテーマ食材/魚介篇「鰻」

【料理名】淀川天然鰻白焼き
氷室山桃

鰻といえば蒲焼きという料理法が王道のように思われるが、白焼きという料理法にも鰻の違った魅力を引き出す魅力がある。そのことをテーマにしたのが今回の料理。白焼きにした鰻。骨や頭は塩をする。霜振りして煎った大豆と昆布と塩で出汁をとり、この大豆出汁に白焼きを漬け20分程度蒸し煮にする。裏漉しした豆腐を大豆出汁に混ぜてペーストに。白焼きを炙って、そこに先程の大豆出汁ペーストをかけている。大阪では半助豆腐などに見られるように鰻と大豆という組み合わせがよく行われる。そこには大豆が鰻の味わいをさらに引き出し、身肉そのものを柔らかくするなどの効果と、それ以上の出合い物としての何かがあるのだろう。


◆7月のテーマ食材/蔬菜篇「冬瓜」


【料理名】
千枚冬瓜五穀豊穣蒸し
熟成昆布餡掛け

試作料理の前に出汁の入ったグラスが配られた。これが城崎氏の提案する「熟成昆布出汁」である。真昆布を焼き昆布とすることで、通常は十数年を経なければ出ないとされる昆布の熟成味を短時間で得ることができるというもの。また鰹出汁を使わずに、昆布の旨味だけで他の食材の良さを引き出すことができる。
今回はこの熟成出汁を使っての餡かけとなっている、冬瓜の青い部分は炭酸塩をして置いた後に、千枚切りにし熱湯でゆがき氷水へ。また白い部分は湯がいて岡上げし、熟成出汁で煮てミキサーにかけ、より淡い色合いにこだわったヒガシマル醤油の「秀醇」等で味を整えた後、葛を引いている。最期に十六穀米に餅米を混ぜたものを蒸し、飽和塩水に浸したチヌの焼いた白身と共に俵にとり、冬瓜にのせ餡かけしている。




【総評】

鰻の白焼きが大豆出汁を使うことで、これほどに優しくそしてふんわりと仕上がることへの驚きの声が多くあがった。鰻と大豆との相性を追求することで、鰻の新しい味わいの発見ができそうだとの意見もあった。冬瓜料理では、熟成出汁に対しての質問がやはり多く出た。合わせ出汁一辺倒ではなく、真昆布だけの出汁を突き詰めてみるよい機会となったようだ。またチヌを焼く前の処理法として紹介された飽和塩水への質問も相次いだ。塩分濃度が30%というこれ以上は塩が溶けない飽和状態の中にチヌを浸すことで旨味を引き出すというもの。ただ、これはチヌそのもの状態(つまり、どれほどそのチヌがクセを持っているかどうか)によっても処理法を変える必要があることから、今後さらなる研究が必要との意見もだされていた。出汁そして魚菜の処理法等に関して、原点に戻ってその在り方を問いかける非常に意欲的で内容のある城崎氏の試作料理提案だったといえよう。

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撮影/藤澤 了 文/笹井良隆