amakaratecho.jp   www全体
大阪料理会とは 組織メンバー 今月の大阪料理 活動レポート
今月の献立 〈第56回〉
2015年 8月

少し秋らしくなった8月。重陽をテーマとした前菜にはいかにも秋ならではの彩りが感じられた。そして今回の食材テーマでは、かつてなかった「米」がとり上げられている。日々の暮らしや料理屋の仕事の中では、あって当たり前のこの食材。しかしそこには、まだ多くの可能性があることを会員各自が実感する定例会となったのではないだろうか。


濱本 良司さん 濱本 良司さん
大阪あべの
辻調理師専門学校

板倉 誠司 板倉 誠司さん
東大阪「喜いち」
お店HP
ぐるなび
北野 博一さん 北野 博一さん
河内長野「喜一」
ぐるなび
濱本 良司さんの前菜 板倉 誠司さんの献立 北野 博一さんの献立

◆8月のテーマ食材/蔬菜篇「米」

【料理名】※写真上
重湯羹 胡麻風味冷やし吸物
重湯桜海老煎餅

揚げ乾飯ちらし

※写真下
玉造黒門越瓜米麹漬
子持鮎飯漬

今回の「米」を見直す発表は、先ずは炊飯そのものからスタートした。茶懐石における炊飯の在り方を、会員の目前で実際の羽釜を使い行われた。そして炊きたての飯が試食として供された。この米を使っての重湯(ライスミルク)は、白米1に対して水を7。とろ火にかけて米粒がとろけるまで煮ていく。そしてこれを冷ましてミキサーで粉砕したものを裏漉していている。では何故今、重湯(ライスミルク)なのだろうか。この問いに対し北野氏は「小麦をはじめ穀物アレルギーが急速に拡大している。そんな中で米というものを料理屋が今一度見直す必要があるのではないか」と解説した。
ライスミルクには様々な利用方がある。例えば、重湯羹なら、重湯1に対して水4以上に煉り胡麻少々と塩、寒天・板ゼリーで固める。さらには重湯に桜海老の粉末を混ぜ、これをクレープ状にし天日で乾燥させたものを揚げれば「桜海老煎餅」ともなる。また、米は重湯だけでなく、これを漬床に活用することで様々な味わいを創り出すことができる。

玉造黒門越瓜は種を除き塩揉みし、奈良漬け床に漬けた後に、二度漬けに米麹に漬けることで旨みが倍増する。子持ち鮎では、背開きした鮎にべた塩し二ヶ月置き、その後にこれを炊米にまぶし重石で漬け込み長ければ1年以上冷蔵庫で保存させている。


 

 

 




【総評】

米の持つ可能性と面白さに参加会員全員が圧倒された。運営委員からは、ライスミルクが注目されているのは日本だけなく海外でも同様。すでに海外のホテルなどでは健康的な飲み物として認識されるまでになっている、ことなどが発表された。また参加会員の中からは、米を独自で研究していたが、ここまで深くは考えていなかった。今一度取り組む契機としたい、といった声も上がっていた。米を使った様々な料理文化は日本全国にある。しかしそうした伝統料理も今では忘れ去られる傾向にある。現代の日本料理人は、今まさにこうした全国の米料理文化に目を向けなければならない時期に来ているのではないだろうか。

  大阪料理会 大阪料理会


撮影/藤澤 了 文/笹井良隆