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大阪料理会とは 組織メンバー 今月の大阪料理 活動レポート
今月の献立 〈第58回〉
2015年 10月

今月の前菜は、炉開き。これはいわば “茶人の正月”。この時期まで使用していた風炉から「炉」開きへと変わることから、早くも心の新年を意味しているのだろう。テーマ食材には、河内蓮根に河内鴨。そして今月は珍しい沖縄の郷土料理を大阪風にアレンジした料理なども披露された。回を重ねる毎に、充実の度を深める大阪料理会に今月も多くの会員が参加した。


神田 芳松さん 神田 芳松さん
堺「松(ときわ)」
ぐるなび
小河原 陽一 小河原 陽一さん
島之内「一陽」
ぐるなび
東迎 高清さん 東迎 高清さん
心斎橋「浅井東迎」
お店HP
ぐるなび
神田 芳松さんの前菜 小河原 陽一さんの献立 東迎 高清さんの献立

◆10月のテーマ食材/魚介篇「秋刀魚」

【料理名】
秋刀魚塩煮(マース煮)

マース(塩)煮とは、沖縄地方の郷土料理。調理法の基本は、白身魚に水と泡盛を加えて煮た、とてもシンプルな料理。しかし、それだけに魚の鮮度が味を大きく左右する。今回はこのマース煮を秋刀魚で挑戦。三枚におろしたサンマの骨を抜き塩漬けに。これを一度塩水で洗いオリーブオイルとローリエを入れた地で約2カ月間漬け込んで、秋刀魚のアンチョビを作っている。次に三枚におろしたサンマの骨を抜き、片身の半分を鳴門に巻いて泡盛と水と塩でマース煮に。内臓は裏濾にし、先ほどのアンチョビを叩いたものと合わせ、旨出汁でのばしたものを火にかけ調味し、吉野葛で葛を引いている。


◆10月のテーマ食材/蔬菜篇「牛蒡・無花果」

【料理名】
黒牛蒡胡麻掛け
無花果大福

アクの強い野菜を、そのアクを生かすことで新たな可能性を引き出す。今回の料理はまさにそれを狙ったものだといえよう。牛蒡を適当な大きさに切り分け、アクをさらさずに鉄鍋で生出汁・淡口・砂糖・鶏ガラ・酒を牛蒡が浸かるほど入れて、沸かしては止めて、またふかすといった工程を2日間にわたって繰り返す。これによりゴボウのアクが鉄鍋とも反応し、真っ黒な牛蒡となるのである。しかしこの黒牛蒡には牛蒡本来の味わいはもとより、牛蒡ならではの食感も残っているのだ。これまで取り除くことを常としていた野菜のアクをも料理の味わいとして残しながら、仕上がりにこれまでない色合いを生み出した驚くべき試作料理。そして手亡豆を使い、餡そして求肥まで手作りした、真っ白な無花果大福が黒牛蒡とのコントラストをなして、食べ手を圧倒する料理であったといえよう。




【総評】

秋刀魚のマース煮そして黒牛蒡と、これまでに食べた経験や見た経験のないものを前に会場も暫し、いつもとは違った雰囲気に包まれた。黒牛蒡については、黒いものを食べることが健康につながる、とよく言われる中、これは非常に面白くためになったとの声が多くあった。また今回は牛蒡だったが、この他にもどのよう野菜で、どのような色を生み出すことができるのか、などに挑戦してみたいという意見も聞かれた。
秋刀魚を使ったマース煮では、沖縄の郷土料理の手法を使いながらも、料理屋的な仕上がりとなっていることへの高い評価がなされた。さらに沖縄ではシークアーサーを使うところを、スダチで大阪的な爽快感を味わいに付加したことへの賛辞も多くあった。郷土料理の素朴ながらも奥深い味わいを、もっと料理屋も取り入れてはどうか、という感想も述べられ、深く印象に残った。

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撮影/藤澤 了 文/笹井良隆