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大阪料理会とは 組織メンバー 今月の大阪料理 活動レポート
今月の献立 〈第59回〉
2015年 11月

立冬を過ぎての大阪料理会。立冬といえども、冬は名ばかり。この日もまさに秋本番という陽気。前菜は、そんな紅葉の時期に相応しい「錦秋」がテーマ。また今回、魚介のテーマとして大阪湾で漁獲量が急増している鰆が選ばれた。寒鰆としてかつて大阪で親しまれてきた食材を今一度、どのような形で料理するのかに注目が集まるところ。そして本会では、これも最近では姿を見せなくなった大阪名物の「牡蠣」料理の新たな試食提案がなされた。


坂本 靖彦さん 坂本 靖彦さん
「割烹さか本」
河村 幸貴 河村 幸貴さん
「割烹作一」
お店HP
城崎 栄一さん 城崎 栄一さん
「じょう崎」
ぐるなび
坂本 靖彦さんの前菜 河村 幸貴さんの献立 城崎 栄一さんの献立

◆11月のテーマ食材/魚介篇「寒鰆」

【料理名】
寒鰆熟成昆布〆田辺大根砧巻
鰆唐墨添え

足がはやいとされる鰆だが、温度管理や調理法への工夫で、生に近い状態の旨さを長く楽しむことができる。今回の試作ではそうしたところからの配慮もなされた。
先ずは真昆布で熟成昆布を作り、これで鰆の身と皮を二日間〆ている。旬の田辺大根は桂にむき、塩水に漬け、甘酢と土佐酢との同割漬けとしている。白板昆布は甘酢で炊き、二日〆た鰆は焼き霜にしている。これを火どりにした皮と大根葉を芯にし鰆で巻き、白板昆布で包んだ後に大根で砧巻にしている。

【料理名】
寒鰆白菜巻き利休味噌餡掛け

三枚におろした鰆に薄塩し、骨は焼いて昆布と鰹で出汁でとる。一枚ずつはがした白菜はいったん湯におとし冷水にとっている。巻き簀に白菜をならべ鰆を芯にして巻く。これを淡口・味醂で調味した出汁で蒸し、その蒸し煮した出汁に白味噌と当たり胡麻を入れて葛を引き利休味噌餡としている。繊細な寒鰆の味わいを大阪的な出汁と合わせることで煮物料理として楽しめる料理だと云えよう。




【総評】

当日は、この大阪産寒鰆料理に合わせ木津市場より太田部長にお越し戴き大阪の鰆事情を説明いただいた。昨年ベースでの大阪産鰆の漁獲量は50tを超しており、年々増加の傾向にある。しかしながら流通などの問題により、大阪産鰆はほとんどが和歌山市場においてセリにかけられてブランド力がつかない状態であること。またこの時期、福井など日本海でも大量の鰆が獲れるが、太平洋側の大阪産鰆はまた違った身質と味を持っているなどの話がなされ参加会員は熱心に聞き入っていた。
さてそんな大阪産寒鰆を使った二品。熟成昆布〆は大阪産鰆の旨味がよく感じられる一品であったとの意見が多くあった。また、田辺大根と合わせたところも大阪産鰆の良さを引き出すのに相応しいといった感想も寄せられた。ただ、貴重とされる鰆の唐墨については不要なのでは、という評がなされていた。次の白菜巻の利休味噌餡掛けには、しっとりと蒸し上がった感じが良いといった声の他、白菜と味噌そして鰆がいずれも相性が良いのに驚いた、という評もあった。

  大阪料理会

大阪産の寒鰆についての説明を行う木津市場の太田部長

大阪料理会


撮影/藤澤 了 文/笹井良隆