amakaratecho.jp   www全体
大阪料理会とは 組織メンバー 今月の大阪料理 活動レポート
今月の献立 〈第60回〉
2015年 12月

師走はいずれの会員店も多忙を極める。本年は少し前倒しする形で12月の定例会が開催された。12月の前菜ではこれまでにも年末がイメージされてきたが、今回は日々に冬らしさを感じさせる、そんな風情を表現した「冬ざれ」。またテーマ食材には大阪の冬に相応しい「ふぐ」が取り上げられた。担当会員が老舗のふぐ料理店であることから質疑応答にもいつにない熱気が感じられた。


石橋 慶喜さん 石橋 慶喜さん
「北新地 慶喜」
お店HP
ぐるなび
辻 宏弥さん 辻 宏弥さん
「法善寺 浅草」
お店HP
ぐるなび
島村 雅晴さん 島村 雅晴さん
「天満 雲鶴」
お店HP
ぐるなび
石橋 慶喜さんの前菜 辻 宏弥さんの献立 島村 雅晴さんの献立

◆12月のテーマ食材/魚介篇「ふぐ」


【料理名】
白子湯豆腐
ふぐのヒレ艶煮

料理を担当いただいた辻氏のお店「法善寺 浅草」は、「づぼらや」と創業がほぼ同じという老舗のふぐ料理店でもある。白子の湯豆腐は、湯がいて裏漉した白子を具とし、同様に裏漉した豆腐と山芋を合わせた生地で包み茶巾にしたもの。出汁はふぐのアラからとったものに淡く味をつけている。てっちり鍋を料理屋風に仕上げた逸品だといえよう。
ふぐのヒレを使った艶煮は、ヒレ酒に使うふぐのヒレを水につけ血抜きをし、さらにこれを酒で洗い、じっくりと弱火の遠火で焼き上げる。これをさらに蒸し上げ、照りが出るように時間をかけて焚きあげている。昨今の焼酎ブームで、ヒレ酒があまり出なくなったことから考案されたヒレのユニークな活用法。さすがに老舗ふぐ料理店ならではの発想だ。


◆12月のテーマ食材/蔬菜篇「大阪菊菜」

【料理名】
菊菜麩、菊菜衣天麩羅、
菊菜けんちん、菊菜水仙、
菊菜ふぐ身皮博多押し

ふぐとは相性の良い菊菜を使った試作5品。菊菜麩は、湯がいた菊菜を絞った汁と、さらに刻んで裏漉したものが「裏漉し水」。絞った後の菊菜はミキサーでペーストに。この裏漉し水を使って白玉粉とグルテン粉をまぜ麩をつくる。整形した後に切り出し焼きできた菊菜麩に白子の裏漉しを乗せて炙っている。同様に菊菜の裏漉し水で小麦粉をといて揚げたものが菊菜衣の天麩羅。菊菜ペーストは豆腐と合わせ調味し、百合根に塗り、先の菊菜けんちん地を乗せて焼いている。菊菜水仙は、湯がいた菊菜を浸し地に漬け、この菊菜浸し地と葛粉を同割で溶いてバットに薄く敷き葛水仙を作り、この水仙生地で軽く絞った菊菜を巻いている。




【総評】

ふぐ料理二品、中でもヒレを活用した艶煮には次々と質問が寄せられた。「ふぐのヒレはヒレ酒程度の認識しかなかった。まさかヒレが食べられる料理になるとは」といった驚きの声が多くあった。ヒレは干すのではなく直火にする、その際には乾きにくい根元の部分はどう処理するのか。そこが味の決め手となるといった細かな技も披露された。さらに料理に添えられていた自家製ポン酢が「旨すぎる、作り方を是非教えてほしい」といった声にも辻料理長は快く丁寧に応えた。
大阪菊菜を使った料理5種。菊菜ひとつで、これほどの多くの味わいや愉しみ方ができるのか、という賞賛の言葉が寄せられた。ただ、せっかくの菊菜麩だがグルテンが少しきつすぎるのではなかったかという声もあった。また運営委員からは「菊菜を使っての昔ながらの水仙料理など、新旧の料理法を織り交ぜた点も素晴らしい」という評が聞かれた。

  大阪料理会 大阪料理会


撮影/藤澤 了 文/笹井良隆